Ernest in Love

2005.9.5&14 専科花組合同公演観劇






愛華みれさんの退団公演以来、実に4年ぶりの花組観劇であり
樹里ちゃんの退団公演「Ernest in Love」を日生劇場で観劇してまいりました・・・
オスカー・ワイルド原作喜劇「まじめが肝心」のミュージカルということで、
内容も知らない原作さえも知らない状態でしたが、あらすじ読んだ限りではなかなか
面白そうだなぁという印象・・・さて、実際は・・・?



主な登場人物は・・・アーネスト(実はジャック・ワージング、更に実は・・・)、
グウェンドレン、アルジャノン、セシリイで、この4人を中心にお話が展開されます。
そこにグウェンドレンの母親ブラックネルが絡み、執事のレイン、牧師や家庭教師など。

あらすじ・・・は公式や歌劇やグラフなどでどぞ(^^)
でも簡単に説明すると、「アーネスト」という名前をめぐってのアーネスト(ジャック)と
グウェンドレン、アルジャノンとセシリイ、この2組の恋人たちの恋の行方は?・・・っていう
最後に向かって進んでいくお話かな。一応、↑の2組はみんな貴族の息子、娘です。
でも、アーネスト(ジャック)の生い立ちは純粋なものではありません。彼には赤ん坊の頃、
黒いバックに入れられた状態で駅の手荷物預かり所で保護されたという事実が・・・
すなわち捨て子だったという過去があります。カデュという貴族の養子になり貴族の教育をされ
ジャック・ワージングという名を付けてもらいます。では何故アーネストという偽名を使って
いるのかというと、カデュ氏の遺言で孫娘セシリイの後見役を頼まれたジャックは道徳的な品行が要求
される立場に息が詰まり、架空の弟アーネストを生み出した。その弟は問題児でその後始末をしに
ロンドンを頻繁に訪れるというジャック。でも実は彼がアーネストとして、窮屈な暮らしの息抜き
をしていたのです・・・その時、グウェンドレンに出逢い恋に落ちてしまったという・・・
彼女もまたアーネストを好きになり、彼からのプロポーズを待っているワケですが、実は彼女、
アーネストの人柄だけでなく、その名前にまで恋をしてしまったから大変。アーネスト(ジャック)
はグウェンドレンを抱きしめながら「もし僕がアーネスト以外の名前でも気持ちは変わらないだろ?」
そう訊ね、「例えば?」と聞く彼女に「例えば、ジャック・・・とか」と、思い切って口にする。
「ジャック?・・・ジャックは嫌っ」突然彼女は不機嫌になってしまった。そして、
「アーネストはまじめ、誠実、熱烈・・・あなたにピッタリの名前だわ」嬉しそうなグウェンドレン
を見たアーネスト(ジャック)は本当のことを言えず困ってしまう。でもお互いの気持ちが通じ合い
まずはハッピー。名前の件と、彼女の母親にどう結婚を認めてもらうか、これが問題だ・・・


と、1幕のお話はこんな感じでしょうか。2幕にはまた思わぬ事態に発展し、更に意外な事実が飛び出す
という、なんともこちらの予想を裏切るというか、そうきたか!っていうラストが待ち構えています。

で、この舞台の感想と言えば、「面白いっ」この一言に尽きます。第一に誰が観ても分りやすい内容。
人物相関でいえば名前を偽っている人間が2人もいるので紛らわしいこともあるけど、話の筋としては
単純なものだから考え込むことなく気楽に観れる(^^)第二に登場人物に悪人がいない。
この作品は「傷つけたり、傷つけられたりできない世界」と評されているそうで、そう云われる通り、
観劇後には清々しさと人の温もりが大きく感じられます。演出の木村先生がパンフに載せた文に
「邪気のない作品」とあるんですが、ホントにそう思えるお話で、それが大きなポイントとも思う。
第三に出演者が生き生きしている。舞台との距離がすごく近くて、みんなの表情がよく窺がえます。
コメディだから、ということもあるけど笑顔がいっぱいで観てて気持ちがイイの、端から端まで。
シリアスなお話以上にパワーが要求されるコメディですから、みんなテンションを維持するのも
大変だろうなぁと、観劇後には思ったんだけど観ている時は申し訳ないけどこれでもかって笑わせて
もらっちゃいました(^^ゞ 飽きたり退屈に思う場面がないから、今回は観劇中に余計なことを
考えるヒマがなかったね(苦笑)とにかく目が離せないから舞台を観てるだけって感じで。

やっぱ木村先生、こういうの上手いよねぇ。少なくともu-tsuの好みとは合ってるよ。
いつもの劇場とは違うからオーケストラも舞台上にスタンバイで新鮮だった。温室みたいなセットの
中にオーケストラがあって、劇中の曲をメドレーで演奏する幕開き・・・あぁミュージカルが始まるん
だなって感じで、ワクワクしちゃいます。そのうちセットが宙吊りで下りてきて一幕目の舞台が出来上が
る。でも上空に位置する橋型のセット、宝塚のセリとは違ってワイヤーで宙吊り状態なんで、樹里ちゃんや
あすかちゃんなんかが動くたびにゆらゆらと揺れてちょっと怖かったなぁ。しっかり固定されてはいるんだ
ろうけど、あれが切れちゃったり取れちゃったらと思うと・・・毎日の点検はしっかりとお願いしたい。

演出もセットも至ってシンプルなんだけど、それがまた劇場にもお話にも嵌ってる。
奇抜で、実際にはあり得ないだろう展開だけど、それでもおとぎ話だからと笑って許せる作品は久々だった。
全く欠点がないワケではないんだけど、総合的によく出来ていると思えるからイイのかな(苦笑)
いや、これで笑えない話だったら欠点が浮き上がりまくるだろうけど・・・
最後まで笑っていられる作品だから、欠点も欠点に見えないってところかな(^^ゞ

そんなワケで、配役の雑感などいってみましょか。




アーネスト(ジャック)・・・樹里咲穂
マジメ、誠実、熱烈・・・樹里ちゃんそのままという印象のアーネスト。そこに明るく元気、が加わる
と更に樹里ちゃんに近づくかな。この役は田舎貴族の純粋でマジメなジャック・ワージングの自分探しという
冒険的要素が入っているように思える。奔放な不良青年のアーネストになることで、窮屈な暮らしをしばし
忘れるというジャック。それが後々、騒動に発展しようとは夢にも思わず・・・すったもんだの末、見事
愛おしいグウェンドレンと結ばれるラストは客席全部がきっとニコニコ笑顔なんじゃないかと思うほど、
可愛らしく初々しかった。この舞台観てて思ったのは、ホント、樹里ちゃんは役者として達者な人だなと
いうこと。樹里ちゃんといえば明るくて元気でムードメーカーという印象だったけど、それはショー作品や
TVなんかのトークでの印象。お芝居ではシリアス、個性的、マジメな役の方が多かったように思う。
だから今回のを観て本領発揮してるなぁって新発見だった。コメディは難しいと云われることが多いけど、
樹里ちゃん観てるとそうは思えない感じ。シリアスもコメディも人間を演じるという点では何ら変わりなくて、
樹里ちゃんはそこに重点を置いているように思えた。こういう言い方は失礼だけど、樹里ちゃんは決して
二枚目じゃない。でも男女の役柄関係なく、情感豊かに演じることができる役者さんだなと改めて実感した。
そして、こういう公演で真ん中に立っていることに違和感がないということも感じた。
だから今回の作品で卒業されることがとっても寂しい。もっともっと色んな人間を演じている姿を観たかった。
もちろん今後は外での舞台出演が決まっているけど、宝塚でしかできない、ここにしかない樹里ちゃんを
もっと観たいと強く思う。そのうちに・・・とか、この次・・・なんて云わずに、観ていればと、
今さら思っても遅いんだけど・・・何事にも時期ってものがあるんだよねぇ。

笑顔一つで客席を包んでしまう温かさを持つ樹里ちゃん・・・素敵な舞台をアリガトね(^^)



アルジャノン・・・蘭寿とむ
正直、花組さんの面々はどんな役者なのかほとんど知りません・・・歌劇やグラフなんかでは拝見して
ますが、あまり縁がないのか観劇は4年ぶり(苦笑)あの時、どんな役をやっていたかは覚えているけど
でも特に気にもかけていなかった、この蘭とむくん。アルジャノンという役がピタリと嵌っているのか
意外と好印象だった(^^; 最初の登場、寝起きのボサボサ頭でボーっとした姿が可笑しくて笑った。
次に出てきたら今度はキュウリサンドをムシャムシャと食べ続け、この人一体ど〜ゆ〜人なのぉ?と
ひたすら笑うu-tsu。アルジーって貴族のボンボンでのほほんとしてるんだけど、女性の扱いが上手くて
結構プレーボーイ。蘭とむくん、アルジャノンをよく演じてました。まさしく、これがアルジャノンって
感じでキャラと配役に違和感がなかった。この舞台での印象は、意外と華やかな人だなってこと。
人目を引く舞台姿だと感じたし、大きいね。帰宅後おとめ引っ張り出してみたら170cmって書いてあった。
初見の時、客席降りで真横まで歩いてきた姿を見上げるのがしんどかったもん。こりゃぁ舞台栄えもする
よなぁと思いました。台詞も聞きやすく、表情も台詞や状況によって変化があり、分りやすかった。
歌はもう少し頑張ってほしいけど、話す時の声に透明感あって好きかな。イメージ的には濃いキャラって
感じの人だったけど意外にも爽やか系が似合って、見かけや思い込みじゃ分らないことが多いもんだと、
学習しました(苦笑)。今度は是非とも本公演の舞台姿を観てみたいなぁと思います。

余談ですが、1幕ラストでアルジーの視線の正面にいたu-tsu・・・何気に見てしまった蘭とむくんの
眼差しの男らしいことったら。思わずドキドキしちゃって目を逸らしてしまった(笑)
もちろん、演出でたまたまこっち側に顔を向けていただけなんだろうけど、あんな表情で見られたら
勘違いだろうと何だろうと照れずにいられないって・・・



グウェンドレン・・・遠野あすか
あすかちゃんも、今までちゃんと舞台を観ていなかった人ですね。印象的だったのは花組エリザの
ヴィンディッシュ嬢、同じく花の「不滅の棘」かな。どちらも映像でのみなんですけど・・・
イメージ的には明るい元気な庶民の女の子っていう役柄が合いそうな感じだったんだけど、↑の2役は
イメージと違う役で、でも嵌っていたなという印象でした。なので、こういう儚げな役の方が似合う
のかなと最近は思い込んでいたのに・・・またしてもこの舞台で印象が変わってしまった(苦笑)。
グウェンドレンは気が強くて積極的なトコロと、名前に恋しちゃうくらい夢見がちなトコロのギャップが
魅力な女の子だと思ったんですけど、あすかちゃんはそれプラス貴族令嬢という部分を上手くミックス
して、それゆえの面白さを醸し出していたかな。現代っ子な香りもすれば、品のある風情も漂い、
各場面でのグウェンドレンを表現する加減が良かった。台詞も聞きやすく、声も可愛いね(^^)
歌も上手だから、樹里ちゃんとのデュエットも心地よく響くし。身体のラインもキレイで、ちょっと
細めの衣装もよく似合ってたなぁ。正直、こんなに良い娘役さんだとは思っていなかったんだ(ーーゞ
若干、華やかさに欠ける気はするけど、だからこそ役柄の幅は広そうだよね。役柄が偏らないっていうか
こんな役もあんな役も観てみたいと思わせる。娘役でそう思わせる存在の人はあまりいないから、
そういう意味で期待の娘役だなぁと、この舞台観て実感した。



セシリイ・・・桜 一花
この人も同じく、初めてといっていいほど、舞台は拝見していない人です・・・
セシリイはジャックの後見で一緒に暮らしていますが、貴族特有?の変わった思考回路を持つ少女(苦笑)
ジャックが作り出した架空のアーネストに恋し、勝手に彼と婚約までしちゃうという・・・
ずいぶんキテレツな想像性豊かな子なんですけど、それも純粋な心を持ち、グウェンドレン同様に
夢見がちな部分が大きいせいなんじゃないかと。なんか、とっても変わってて面白いキャラでした。
一花ちゃんは18歳の少女という設定に違和感なく、可愛い、ちょっと変わった少女そのもので。
彼女が歌う『悪い人』は、世間知らずの少女の妄想というか想像と言うか、素朴な疑問が詰め込まれた
歌詞で面白いです。一花ちゃんはとても小柄なのに、見かけによらず発するパワーがすごい。
歌っている時もオーバーアクションで、観てるこっちが追うのに大変なくらい走り回り、一緒に踊る
アルジーはフラフラで、それに気づかず歌い上げる姿は可笑しくも可愛いセシリイでした(^^)
声がハスキーで歌は高音がキツイ感じですが、歌詞も台詞も意外に聴き易かったな。



その他、グウェンドレン母のブラックネルは出雲 綾さん。娘の結婚を反対し、ジャックと対立する関係
ですが、登場すると威圧感で場が重くなる(苦笑)もちろん、この舞台ではそれでいいんですけどね。
ともすれば、ただの嫌われ役になってしまいそうな役どころなんですけど、貴族の義務と娘の幸せを願う
母親という部分は出せていたんじゃないかと。ブラックネルの歌う『ハンドバックは母親じゃない』は
迫力と歌詞の面白さが絶妙で良かった。アルジャノンの執事レインは樹里ちゃんの同期、高翔さん。
ショーでの印象が強い人で、お芝居をしているのを観たのは今回がほぼ初めて(苦笑)お話の進行役を
務めるレインは舞台上でキュウリを食べたり幕開きの第一声を担ったりと、行動の幅が広い。
のほほん貴族のアルジャノンを主人に持つので、執事はしっかり者という印象。でも2幕の冒頭で、小道具
のベルが壊れてしまった時は、一瞬、素でうろたえていた(笑)なかなかイイ感じだった。

悠真 倫さんの牧師はもうちょっと濃いキャラでも良かったように思う。主要人物にマトモなキャラが
いないので、工夫しないと影が薄くなっちゃうと思うんだよね。出ている時は牧師という黒ずくめ衣装が
逆に目を引くんだけど、袖に入っちゃうと存在を忘れてしまうので・・・セシリイの家庭教師ミス・プリズム
の花純風香さん。実はジャック生い立ちの鍵を握る重要人物なんですが、どーも配役的には合っていない
ように感じました。それは台詞で語られるプリズムの年齢のせいかと。詳しい年齢は出ませんが、軽く
見積もってもプリズムの年齢は40代半ばから後半・・・でも花純さんを見る限り、頑張っても30代半ばに
しか見えない。しかもプリズムは、ものすごいロマンス物小説を3冊も書き上げたという過去があるとされ
ていますが、そんな設定にも無理を感じてしまう。そもそもその小説が原因で、ジャックは捨て子という
人生を負わされてしまうワケで、でもあのプリズムの作り方ではそんな大騒動に発展するようには思えない。
2幕からの少ない出番だけですから困難な役ではありますが・・・でも、まぁ頑張りは認める(苦笑)。

その他、アンサンブルのみなさんは、少ない出番ながらもチームワーク良くまとまっていて、
舞台に腰掛けたり、客席で踊ったりと身近なトコロでの活躍が良かった(^^)
みんな笑顔で、舞台の端でもちゃんと自分でキャラを作っていたように思う。
客席と舞台が近いので、より初々しさが感じられて、フィナーレでは満遍なくみなさんを観てたら
なんだかこっちまでニコニコと笑ってしまった。ホントにねぇ、よく表情が見えるんですよ。
本公演とは違う和やかなムードも良かったなぁ。アットホームな感じだね、うん。



いつも以上に現実から離れ、笑いっぱなしで過した2時間40分・・・もう涙流しながらの観劇は
何年ぶりだったろうか(苦笑)もちろん、悲しい涙ではなく、笑いすぎの涙ね(^^ゞ 
突拍子もない内容だけど、全体的に安定感ある作品で、こんな面白い舞台があったのかと嬉しかった。
宝塚オリジナルではないけど、オフ・ブロードウェイでも良い作品はどんどん上演して欲しいなぁ。
オリジナルで良い作品が出ないんだもん、こうなったら輸入物でいいよって感じだね。
でもこれは本公演向きじゃないからなぁ。とはいえバウなんかでも再演できる作品ではあるよね。

もう明後日には千秋楽だけど、もっともっと上演期間が長ければと思いたくなる舞台・・・
樹里ちゃん筆頭に、これで一つの組になっているように思えて、つくづくチームワークの良さを感じる。
特別ファンというワケではなかったけど、存在感は特別で、大好きなタカラジェンヌの1人だった。
最後に、良い舞台を観れて運が良かったな。カーテンコールで明るく話す樹里ちゃんを見てると、
こちらも清々しく自然と笑顔になれて、『あぁ、やっぱ樹里ちゃんて好きだな』と実感する。

樹里ちゃんには、いつも笑ってて欲しいと願う今日この頃・・・・








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