花舞う長安

−玄宗と楊貴妃−

2004.12.6 13:30観劇 1F


2回目なのに、初日を迎えたような印象です(苦笑)
それだけ前回の状態が思わしくないってことでして・・・
もう、それはそれはとても「観た」という感じがしましたよ。
やっぱりセンターあたりが1番見易いですねぇ。

それではレポにいってみましょう(^^)



目を閉じ、じっと雨の音に身をまかせるような玄宗の姿・・・
実年齢よりも年老いた人のようにみえます。
生涯、ただ一人の女性ともいえる楊貴妃を思い、
今一度、逢いたいと強く願う玄宗の前に仙人が音もなく姿を現す・・・

冒頭はとても繊細で、動きの少ない場面だからこそ心情の表現が
問われるシーンだなと、改めて思いました。
あまりに心に抱える寂しさというか悲しみが深いせいか、
ここでの玄宗はやつれて疲れが前面に出ているような感じがします。
皇帝という威厳はなく、ただの初老の男というか・・・
歴史よりもかなり若い設定の玄宗なので、この場面でもせいぜい40代半ば
くらい、若しくは40代後半なんだろうなと解釈しているんですね、個人的に。
でもその割りに老けて見えるのは、身分によってもたらされた苦労と、
何より一番の女性を失ったことが原因なのだろうと。
この冒頭の印象が強ければ強いほど、楊貴妃が命を絶つ場面の
重みや深さが更に活きてくるのではないかなぁと。
楊貴妃を守れず死なせてしまってから数年後・・・というのが冒頭場面ですから、
ここは一番大切だなと思います。u-tsuはこのシーンがとても大好きで、
楊貴妃が死んだ後に蝶が飛び交う場面では、ふと冒頭のシーンを思い出します。
死後、何年経ても玄宗の苦しみ、悲しみは終ることがない・・・・
それがあの悟桐雨という場面なのでしょうね。


仙人に誘われるまま玄宗の姿が消えると過去に戻り・・・
若き玄宗が韋皇后と安楽公主を捕え、皇帝即位を宣言しますが、
やはりこの場面のムリヤリ感は消えません(苦笑)。
だって韋皇后親子が出てきても「誰?」だし、中宗皇帝が登場しても「誰?」って
感じだし・・・しかもいきなり小刀で皇帝を刺し殺しちゃうから「え?なんでなんで?」
って観てる側がオロオロしちゃって、なんか理解しきれない。
不自然さだけが目立っているなぁという印象です。
ある人物の現在から始まり、その過去を遡りお話しが進んでいくという物語だと
大体ストーリーテーラー的な人物が登場しますが、今回はそういう存在で
観客に語りかける人物っていうのが設定されていないですよね。
常に案内人が登場する必要はありませんが、お話しが軌道に乗るまでは
フォローしてほしいなぁと思うのですが・・・・
仙人と共に玄宗の姿が消え、それと同時に玄宗の記憶が過去へ飛ぶ・・・
と思えば、まぁ理解し難いとまではいかないかもって感じですが、
物語りが過去へ遡るってこと自体、一体誰がその過去を見せているのか?って
ことも気になりますし、誰が見せているかによって若干捉えかたも変わってくるかと。
玄宗が仙人について楊貴妃に逢いに行く・・・これからどんなことが起こるんだろう、
という期待感と楽しみが観客の気持ちにはあるので、それを壊すような演出の
仕方は止めて欲しい・・・感情もスムーズに入っていかないし、モヤモヤっと残るし。
その後の群舞が大好きなので、ここが上手く繋がってくれていたらと残念です。


玄宗と入れ替わるように楊貴妃がセリ上がると、周囲から一斉にオペラグラスが
上がりました(笑)。やっぱり、こういう光景を見ながら観劇するのが楽しいですね(^^)
なんたって美女は目の保養ですからねぇ。ここの玉環はまだ幼さが強調されていて
それすらも印象的だなと。意外と、とは失礼ですが、歌う声がキレイですね檀ちゃんは。
聞き苦しいこともあるのは事実ですが、今回はそんな気になるトコロもないです。
とても好感触という印象でした。檀ちゃんの持ち味と役柄がピタリと合ったのかな。

この寿王の館で玄宗は息子の許婚を奪い、息子の寿王は怒りを感じながらも
大きな悲しみを受けて、『いつの日か 手に入れる・・・』と誓います。
が、それ以降、特に寿王が玉環を取り戻すための行動は一切なく、あの決意は
一体なんだったのか?と首をひねりたくなるu-tsuです・・・
寿王の出番がこの僅かな一場面だけってのは勿体無いです。
どうせ宝塚版のお話しなんだから、安禄山にでも上手く使わせたらイイのになぁと。
所詮はお坊ちゃんなんだから、禄山なら簡単に手なずけられたのじゃないかと思う。
キレイな許婚を目の前で父皇帝に奪われた寿王には、冷静な判断もつかず、
雑胡といえど力になってくれそうな禄山についていく・・・っていうくらいの
展開があるほうが面白いような気がするのですがねぇ。
どうして反乱が起きたのかといえば、寿王の許婚を奪ったのをはじめ、
その玉環に皇帝がのめり込み、楊家一族を優遇し、政務はおろそかになり・・・
他にも起用した政務官などの職権乱用などから国民の我慢は限界を越し、
そこへ野心を抱いた安禄山が武力と国民を利用して起こしたのですから、
身内からも反乱に荷担する人物が出てもイイと思うんですよねぇ。
それほど大唐国は追いつめられた、っていう方が流れ的に自然のような気がします。

安禄山の表情もチェック。雑胡出身でありながら確実に昇進を得て、その過程で
徐々に野心が大きくなった禄山。玄宗の心情を汲み取り、常に距離を保っている
様子・・・その禄山に予定外の出来事、玄宗が玉環を息子から奪うという予想も
しなかった自体が起こった。この時の禄山は自分も玉環を狙っていたかのような
驚きと、自体の急転を楽しむ様が見て取れて、厄介な人物だなという感じが
その後の寿王とのやりとりへと繋がっていくというトコロでしょうか。

それにしても、どうして玉環は玄宗に「こちらへ来い」と言われて、寿王をかえりみずに
行ってしまったのでしょうか?玄宗がどういう人物か知らないのに、許婚を見ることも
しない・・・しかも、どんな宝でも差し上げますという話しをしている最中なのに。
なんの疑いもなく、というか、あまりにも軽々しい行動だったのではないかと。
でもそれ以前に、玄宗を知らないってのはヘンだと思う。
寿王の使いかたといい、玉環の行動といい、設定に矛盾のある場面だと感じます。


手を引かれるがままの玉環・・・ようやく手が離されると目の前の人物が皇帝と知る。
恐れおののくという感じで顔を伏せた玉環、すごく震えているんですね。
初めて知りましたわ・・・それでもすぐに言いたい事を言えるってのは凄い(苦笑)。
後宮には皇帝へ口答えする人なんていないのに、この玉環は言い切っちゃう。
その辺が玄宗にとっては新鮮で面白いということで、お咎めは無しですが、
それくらいのことで「殺されても仕方がない」っていう皇帝はずいぶんと心が狭いと
思ってしまいます。何に対してもそれだから恨まれるし、後の大事にもつながって
しまうのじゃないかと・・・一国の皇帝が意見ぐらい言わせないでどうすんだ?と。
全ての意見に耳を傾けているワケにはいかないでしょうけど、しきたりも知らない
小娘相手に、ちょっとオトナゲないぞと感じるのですよ、ここの皇帝様には。
とっても自分勝手でやりたい放題な印象もありますし・・・
大体、後宮には顔も見たことがない女性たちも大勢いるっていうのに、
なぜそんなに囲っておく必要があるのやら?皇帝に即位したての頃は
後宮を廃止した玄宗なのに、いつから女好きになっちゃったの〜って感じ。
ま、後宮に入った女性の家族はそれなりに要職につけたはずだから、
これも事業と考えれば致し方のないことなのかも知れませんが。
今は時代が違うし、こんなこともないからu-tsuにはそういう考えが理解できません。
ハッハッハ〜と去っていく皇帝陛下を見ながら、やれやれと思ってしまった・・・


祝典の場面は豪華さを改めて実感しました。前回は見上げる感じだったので、
センターから見る光景にうわぁ〜って口に出しちゃいました(^^)
その中心に存在する玄宗の麗しいことったら、もうキレイでした〜
若き皇帝っていう風情がイイなぁと。でも歳のわりにちょっと老けて見えるかも(苦笑)
若いっていっても身分柄、落着いているっていう方がイイのかな。

玉環と梅妃の登場は、やっぱり梅妃中心に見てしまいます、梅妃派なんで。
新参者の玉環への態度が後宮の熾烈な争いを垣間見るという感じですよね。
個人的な希望としては、梅妃にはあまりこういうことはして欲しくないなぁと
思っています。梅妃にはその教養の高さから、逆に玉環を相手にせず
じっと我慢をするような女性であってほしいなと・・・大人しいとかお人好しって
いうのではなく、醜い争い事には関わらないでほしいんですよね。
我儘や無理難題ばかりを言うのではなく、時には皇帝を諭すような余裕があり、
皇帝が頼りにするような女性・・・っていうのが梅妃の印象なので、個人的には。
だから楊貴妃との場面だけではなく、玄宗と二人だけの場面も欲しかったと残念。
玄宗と梅妃の愛情ってのが観たかったんですけどねぇ・・・


皇甫惟明が登場し、禄山と言い争いになる謁見の間・・・
武力以外に征する道はと尋ねる皇帝に、それ以外はあり得ないと返答する惟明。
禄山は心外だといわんばかりに惟明へくってかかる・・・雑胡には野蛮人ばかりが
いるわけではなく、禄山が憮然とするのも無理はないけど、多少の焦りが見え隠れ
していて、惟明の存在に自分への危機感を感じ取っているように思えます。
My初日から1週間過ぎましたが、ずいぶんと二人の様子が変わったなぁと感じます。
激しさが増しているんですね、言い合いの。玄宗も言うように確かに二人の意見は
それぞれ頷けるトコロがあるんですけど・・・うーん政治とは難しいもんです(苦笑)。

ここでは禄山が楊貴妃は自分の母も同然だと冗談を言いますが、なんだか意味が
よく理解できない・・・中国では母親の存在がとても大きく、母親には頭が上がらない
というほど敬いの対象となっているそうですが、禄山のこの発言は楊貴妃に対して
同じくらい大切だということなのでしょうかねぇ?他に表現のしようはないのかな?

楊貴妃と惟明のやりとりは、この物語の中でもシンプルで意外と自然ですよね。
この場面はお気に入りです(^^)惟明も爽やかだし、楊貴妃も普通だから(笑)。
淡い恋心を抱いた皇甫惟明・・・この束の間の思い出を胸に死んでいったのかな?
その後の彼を思うと、やっぱり可哀想だなと思う。一場面の登場で印象がすごく
大きいから、死を賜ったという台詞には、やっぱりショックですよね。
禄山との対決も見てみたかったしなぁ・・・残念。


親書を書きながら貴妃を思う玄宗・・・普通の恋する男性というか、どこにでもいるような
一人の女性を思う男という感じが可愛らしくて、ここの玄宗は大好きです(^^;
ついつい『太真・・・』とか口走っちゃって慌てふためくという(笑)。
そう、ちょっと現実から離れれば、玄宗は普通の男なんだなぁと、この場面になると
思えます。ほんの少し、玄宗への見方が変わるんですよね。
でもすぐに仕事を休みたいとか言い出して周囲を困らせるのを見ると、やっぱり
困ったちゃんだなぁと。若いからねぇ、そりゃ遊びもしたいよね。
でも自分で皇帝に即位しちゃったんだから、仕事はちゃんとしようよと思う。
皇帝の我儘で怒られちゃう李 林甫さん、観ててちょっと気の毒に思うわ(笑)。


回廊での楊貴妃と梅妃・・・女ってコワ〜イと思いつつ、一人の男の寵愛を得るため
彼女たちなりの必死な生き方には同情もします。普通の男性と結婚していたなら
こんな争い事にも縁はないだろうし、日々、もう少し穏やかで平和な生活が送れた
はずなんですよねぇ。生活的には苦労がなくても、いつ愛情が冷めてしまうかと
気がきじゃないでしょうねきっと・・・梅妃が玄宗におふれを出してもらったと知った
楊貴妃は思わずヨロっとよろけますが、あれはやっぱりすでに自分が一番の妃だと
思っていたし周りもそういう待遇だったから、梅妃の言葉に驚いたのでしょうね。
今更、玄宗が自分以外の妃の為に何かを成すということはあり得ず、まして自分は
何も知らず知らされず・・・玄宗の愛情は自分だけのものと信じていた楊貴妃に
とってはショック以外のなにものもなかったというところでしょうか。
後宮には美女が三千人もいるというのに、自分だけが寵を得ていると考える貴妃は
ちょっとずーずーしいなと思ったりもするけど、それだけじゃなくてホントに玄宗の
ことが大好きになっているから、他の妃たちのことが見えていないのかも?
それにしても梅妃の抱く疑問、どうして玄宗は楊貴妃に夢中なのか?っていうのは
u-tsuにとっても疑問でございます・・・・絶世、とつく美女ぶり以外は他の妃と何が
違うのやら分かりません(苦笑)。何事も流されるがままにならない、という部分か?
My楽までに、分かる日がくるのだろうか・・・・?


貴妃酔酒・・・不安を吹き飛ばすように酒に身を委ねる楊貴妃。
後宮の多くの女性も、そのような時間を過ごしたことがあるのでしょうねぇ・・・っていうか
ほとんどの女性が毎日そんな状態なんじゃ?なんたって三千人ですから。
1日1人と過ごしたら次まで8年待ち(苦笑)。1日3人と過ごしたって次まで約3年待ち
ですからねぇ・・・それ以前に後宮で顔を知っている妃なんて何人いるのやら?
そんな状況じゃ楊貴妃の不安も分からないでもないですねぇ。

その後の水蓮の幻想、やっぱりイイですね(^^;今回はよ〜く見えました。
曲が染み込んできてジ〜ンときちゃいます。ここを観ると、二人の関係というか
愛情の理解度がちょっと深くなります。身分も外見も関係なく、ただの人としてお互いを
愛しているんだなというのが伝わるというか。ホントに好きなんですよね、二人とも。
最初の頃は玉環を奪うところから始まって尼寺へ連れて行かれたりとかありましたが、
この時点では年月と共に気持ちが深まってお互いへの思いが何よりも大切なものへと
変化しているというように感じます。七月七日の誓いで更に愛が実ったという気もするし。
玄宗と楊貴妃の心が完全に結ばれたこの場面はとってもお気に入りです。
でも左右から流れてくる水蓮はヘンてこりんだから、使わないでほしい・・・・


皇甫惟明が死を賜った・・・楊貴妃は信頼できる数少ない忠臣を失い動揺する。
妃が、というより女性が政治に口出しすることが許されていないこの時代ですが、
楊貴妃は結構、思った事は口に出す性格。そんな彼女に脅すような口調で
忠告する高力士・・・見ているこちらもちょっと恐かったです(苦笑)。

安禄山の登場・・・楽師と踊る楊貴妃を見る禄山の何の感情もないような
冷たい表情。なぜ、禄山はこの時期に反乱を起こしたのか?
それはやっぱり惟明が死んだから、ってことなんでしょうかねぇ。
惟明があずかっていた兵士たちは禄山についているのかな?
あの真面目さからみて、宮廷の人間から煙たがられたために色々とでっち上げられて
殺されてしまったという感じでしょうね。彼の下で働いていた兵士達の多くは
決断を下した玄宗を恨んでいてもおかしくない・・・ってことで、禄山は惟明の兵士
たちをも味方にして軍を強化できたから、自分の野望の為に反乱を起こした。
と、u-tsuは思うことにしました(^^)人数も充分揃ったし、この機を逃すと反乱を
起こすまでにまた時間が必要になりそうだし、十五万ともいわれる軍隊を統率するのは
大変な仕事ですもんねぇ。ヘタすれば反乱の前に味方が分裂なんてことも・・・
だから、禄山はこの時期に兵を起こしたのだろうと思う。


炎の中の戦場・・・あんなにのん気な生活をしていたのに、玄宗ってばずいぶんと
動き回れるものですねぇ(苦笑)。もともと武将ってことでもあったからなのかな?
でも皇帝になってからは身体を使ったり武器での鍛錬なんてしているようには
見えなかったんだけど・・・全然、腕が落ちているようではなかったよねぇ。
少ない軍勢で必死だったというところなのかな?
なんで、韋皇后らを捕らえたときと同じお衣装なのか・・・これは気になる(^^ゞ
だってずいぶんと年月経っているのに、同じ軍装なんてヘンじゃない?
今なんて皇帝なんだよ?皇帝が出陣するのに皇子時代と同じだなんてねぇ。
ゴテゴテと装飾がついているよりは動き易いのかもしれないけど、
皇帝っていつも豪華なお衣装だったから意外でさ(笑)。ちょっと気になったの。

正面からよ〜く見渡せて、改めてセリとか盆とか使っての人の動きが分かりました。
要所要所で型を決めていくのが見ててカッコイイなぁ〜と(^^)
皇帝の怒った表情も、禄山の野心溢れる表情も、信念持って戦っている姿って
やっぱり素敵と思いますよね。銀橋での対峙は、もう少し長く斬り合ってくれたら
良かったのになと。玄宗は禄山に向って行こうとしていたのに陳玄礼が止めに入り
ますよね。あれは何故なのでしょう?勢いで玄宗が向っていたら勝てるような気が
したのですが・・・特に宮廷の軍が全滅とかっていう知らせもなかったのに、
なんで引き下がってしまったのかがワカラナイ。ま、皇帝に危険な行為はさせられない
という玄礼の気持ちは分かるけど、でもなんであの時なのかが気になる・・・
禄山さえ捕えられたら楊貴妃の死は免れることができたかも・・・なんて思ったりもする。
だってどう見ても玄宗が負けるようには思えなかったんだよねぇ。
割って入る玄礼の行動にすごく違和感あったし、それに納得して去って行く玄宗の
考えも理解できなかったですよ。なんで対峙しなかったのかナゾです(ーー;


そしていよいよ玄宗と楊貴妃の別れ・・・前回の時よりもじ〜んときちゃった(T‐T)
普通の男と同じように一人の女性を深く愛してしまった皇帝と、皇帝ではなく
一人の男として玄宗を愛した楊貴妃・・・普通の人とおなじように、愛情で繋がれて
いる二人が、その普通の人たちともいえる国民の声によって離されてしまう。
玄宗にとっては命に代えても守りたいものは楊貴妃との愛というよりも、楊貴妃そのもの。
他には何もいらない。皇帝という身分も、もしかしたら唐という国すら玄宗には
必要ないものになっていたかもしれない・・・でも、『一人の女のために国を滅ぼすのか』
という高力士の言葉が、長い間皇族として、また皇帝として過ごしてきた玄宗に
重くのしかかってしまう。玄宗はここで自分の我を通すことを躊躇してしまうんですよね。
あの時の玄宗は一瞬呆然としているのだろうと・・・そして楊貴妃は自分が死ぬべきだと
理解しているし、玄宗が時分の死を止めきれないこともよく分かっているのではないかと。
だって、楊貴妃の最期はあまりにも立派で潔かった。いざという時、こうして妃の務めを
しっかりと果たせる女性だと、玄宗も高力士も知っていたのだろうと思う。
こういう女性だからこそ、皇帝に愛されてその寵を失う事なく側にいることができたのでは
ないかな・・・・と、今回の観劇では思うようになりました。
途中では、どうして玄宗がこんなにも楊貴妃に夢中なのか理解できませんでしたが、
この場面になると、こういう女性だからか、と頷けるというか・・・理解するのとは違うけど、
なんとなく気持ちは分かるかなという感じで。もちろん、梅妃あたりもこういう事態になった
時は同じように潔い最期を迎えるのではないかと思います。が、梅妃の場合は玄宗の
目前でというよりも、自分が死んでから知らせてくれっていうやりかたかも。
詩を書くのが上手ってことなんで、玄宗への思いを詩に残してとか・・・ってあくまでも想像。

楊貴妃の最期のとき、『貴妃〜っ!!!』って叫んでいる(記憶では)のですが、
その叫びがまた悲しいのなんのって(T-T)もう見てて可哀想なんですよ玄宗様が・・・
今回なんて、叫びが強過ぎて刀が半分抜け落ちるくらいでしたよ。
そのまま銀橋歩くので、早く気づいてちょーだいと気がきじゃなかった(苦笑)。
こんなに悲しい場面で刀が客席にでも落ちたら涙も引っ込むぞ、って。
幸い玄宗様も気付いて、何事も無くでしたので良かったですけど。
この銀橋の時の玄宗って、魂が死んでますよね・・・足が勝手に歩を進めているというか。
抜け殻状態って感じなの。多くのことを思い通りにしてきた皇帝が守ってきた民によって、
一番大切なものを否定され奪われてしまった。大切なものを否定されるというのは、
ある意味、自分をも否定されたも同然なのではないかと。
無理に気持ちを理解してもらおうとは思わないけど、でも否定されるのはなんかカナシイ。

割って入る陳玄礼も、悲しさはもちろん大きかったことでしょうね。
皇帝の為には楊貴妃を生かしたい、でも唐を滅ぼすわけにもいかない・・・
たとえ恨まれても、自分がやるしかないという気持ちではいたのではないかと。
忠臣という立場に苦労はつきものとはいえ、長く仕えている主人の悲しい姿はやっぱり
辛いものがあるでしょうね。玄礼はその後も、立派に忠臣として皇帝を支えてくれたと信じます。


楊貴妃の死から長い時間の後、やっと玄宗は再会を果たす・・・
仙女となった楊貴妃は、あの日以上の眩しさで姿を現し、玄宗へ思いを伝えたいと歌います。
あーこの役は檀ちゃん以外にはないな、という感想をもつくらいキレイな場面ですね。
七夕の誓いを再び玄宗が口にすると、二人の思いがいつまでも続いてほしいなぁと、
素直に思えるのがイイなと思える。自分が楊貴妃に贈ったキレイな髪飾りを抱いて微笑む
玄宗は、まだまだ悲しみのなかにいるんだけど、でも今一度楊貴妃に逢えたことで
気持ちはかなり満たされて幸せだったのではないかなと思いました。
楊貴妃は悔いのない微笑みだったし、玄宗もとっても穏やかな表情で楊貴妃を見つめて
いたし・・・ラストにイイ表情だったというだけで、このお話はめでたし、めでたしって感じ。

英真さんの仙人が、また場を引き締めてくれるし深みを増してくれるしで、適役です。
今回は割りと役者と役がはまっていることが多くて、それに関しての違和感や不満は
ほとんどありませんでした。珍しいこともあるもんだって感じですけど(^^;
その代り、場面展開の不満や役の使いかたに関しては多々ありますよね。
あまりにも完璧なストーリーだと文句をいう楽しみがなくなりますけど・・・
でも、題材的にはイイお話なんだから、もうちょっと一捻りほしかったなぁ。
どうせなら完全オリジナルでの玄宗と楊貴妃にでもしたほうが良かったような気が・・・
そもそも玄宗を主役にするから面白味に欠けるような?
大体、皇帝が主役じゃ動き取れないですもんねぇ(苦笑)。
きっと、この辺の不満はずっと消える事なく、
千秋楽を迎えることになるのでしょう(ーーゞ


次の観劇までにDVDを見て細かいところを予習して、
更に花舞う長安を旅したいと思います。





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