長崎しぐれ坂


−江戸無宿より−


やっと2回目、3回目を観劇できました。
関東で10数年振りに震度5の地震を観測した後日で、
両日共にちょっとビクビクな観劇となりました(ーー;
無事帰れたので、つぶやいてみましょう・・・



舞踊会のようなプロローグ・・・2回目で限界を感じます(苦笑)
キレイです。わたるくんもステキです。でも眠いです・・・
それでもこの場面は始まったばかりなので体力的にはO.Kかな(^^ゞ
子供時代の卯之さんたち、初見よりも分りやすくて良くなっていると
感じます。特に卯之ちゃんのしゅんくん、足を庇う仕種がや言葉が
大きくなっていて、どうにもできない苛立たしさが伝わってきます。
大人になった卯之さんは割り切っているのか、それが人生において足枷に
なっているようには思えませんが、子供の時はとても大きな不満だった
はずですよね。一人では自分の身すら守れない身体を悔しいと思う。
親を恨んだこともあっただろうし、上手くいかないことを足のせいに
したこともあったかもしれない。苛められるのは足が不自由だから・・・
思わず泣いた自分を『男は人前で泣くもんじゃねぇ』と叱る伊佐兄ぃ。
その言葉には『弱さや原因を足のせいにするな』という意味もあるんじゃ
ないのかなと。経験の少ない子供が、大事な友をそうやって勇気づけて
いたのかもしれないと、今回観てて感じましたねぇ。

成長した3人が登場し決めのポーズで暗転後、u-tsuの頭の中には舘岡さん
登場の緊迫感ある音楽が浮かんだのですが、始まったのは蛇踊り・・・
この場面があるのをすっかり失念していた(苦笑)その程度の印象しか
ないということなんでしょうかね。花魁はキレイなんだけど、1度観たら
もう十分ですという感じ・・・DVD買ったらきっとココだけ飛ばすと思う。
一つ疑問なんだけど、なんで手古舞のお衣装はトランプ柄なんでしょ?

舘岡さんはホントに真面目というか、融通が利かない人ですよねぇ。
決して悪い人じゃないんだけど、卯之さんに唾を吐きかけるのを見ると
ずいぶんと思い上がったエリートなんだな、とも思う。
長崎ボケしたくないとか云ってるくらいだから、自分だけは規則に忠実で
ありたいとか思ってるだけなのかもしれないけど・・・でも卯之さんに
あの仕打ちはヒドイわ、舘岡さんってば・・・ま、卯之さんはワザと
ああいう態度で接しているであろうから、それも想定内なのかも?

唐人屋敷を訪れたおしまが云う『あんたは相変わらず伊佐さんに・・・』
という言葉。これu-tsuは結構好きな言葉です。子供の時から変わらず
一途に伊佐を慕っている卯之さんの気持ちがよく出ているというか。
幼馴染がいう言葉だから重みが感じられるし・・・『それというのも
伊佐の人柄の良さなんだ』と、自分のことのように嬉しそうに語る
卯之さんにも人柄の良さが出ているように思えるな。
唐人屋敷にも伊佐同様、卯之さんを慕っている人結構いそうだし。
伊佐次本人は気づいてないかもしれないけど、水牛先生なんかは卯之さん
の伊佐次への気持ちってのに薄々気づいていそうだしねぇ。
知ってて何も云わずに2人を見守っているようにu-tsuには思えます。

関帝像の下から伊佐次が登場しますが、客席からは関帝のヒゲまでしか
見えず・・・この場面になるとどうしても覗きこみたい衝動に(苦笑)
どうしたら見えるんだろうか?やっぱり最前列に座んないとムリか?
見えたからどうってことはないんだけど、なんか無性に見たくなるの。
去年、横浜の関帝廟で見たことはあるんですが、長いヒゲと威圧感ある
風情が印象的でした。なんか迫力ある人でしたよ。

ここでの伊佐とらしゃのやりとりは、より緊張感増して見応えあります。
若いゆえに無鉄砲さが抜けないらしゃと、それを諫めて現実の厳しさを
教える伊佐次・・・同じように若い頃には分らなかった裏切りの親切心。
危うく命を落としかけた過去を持つ伊佐次だから、可愛い手下をそんな
危険にはあわせたくないと言葉が厳しくなる。でも囲いの中の生活に
限界を感じ始めていたらしゃは、伊佐次の言葉に少しずつ苛立ちをおぼえ
存在すらも疎ましく思うように・・・らしゃは親思いで優しい青年だと
思いますが、なぜ犯罪に手を染めてしまったんでしょうねぇ?
親を大切に思うなら、親を心配させるようなことはしないと思うんだが?
ぼらのウソに簡単に騙されてしまうほど、親が絡むと無防備になってしまう
らしゃ・・・そういう優しい部分をよく知っているから伊佐次も言葉を
厳しくせざるをえない。追われる身で異国の領域に匿われている人間は、
情に流されたら命取りになる。長い逃亡生活で伊佐次は悟り、らしゃは
罪人に科せられた現実をまだ理解できていない・・・
この場面、現在の伊佐次と過去の伊佐次の対立のようにも思えますね。

しぐれ坂での再会は初見であっけないなぁと感じましたが、まぁこんな
もんなのかなという印象に変わりました。演じる人たちの間が良いというか。
おしまが振り向いた時の伊佐次の反応、客席からは背中しか見えないけど
驚きが分るし、向き合った瞬間は若い頃の2人がそこにいるような気さえ
感じる。2人を見た卯之さんはちょっと嬉しそうに、ちょっと強がるように
冗談めかしておどけてみせる・・・ここの卯之さん、本心をひたすら隠して
2人を見守っている気がしてちと悲しい気がする。卯之さん自身は見守る
ことが幸せに思えるのかもしれないけど、いつも2人の一歩後ろを歩いてる
のを見ると、少しは卯之さんの気持ちに気づいてよ〜と思うu-tsu・・・


しぐれ坂を歌いながら歩くらしゃ・・・哀愁漂う歌声と儚げな姿が
この後のらしゃの運命を物語っているようで、なんか切なかった・・・
しかもこの歌がまた良い歌だしねぇ。主題歌よりもこっちの方がu-tsuは
好きだな。なんでCDに入れなかったのか疑問なくらいよ。もちろん歌うのは
安蘭さんで(^^)もうこの歌はらしゃの為の歌って言っても過言じゃない
と思う。なんでCD入りしないんでしょうねぇ、すごい不満なんだけどっ。

伊佐次の部屋の場面では、やっぱり李花とのやりとりが良いなぁと実感。
李花の一途さは可愛くもあり時に疎ましくも感じますが、自分の気持ちに
正直に行動する李花を羨ましくも思う。伊佐次は李花の存在に癒された
ことたくさんあったんだろうなって想像できますよね。
でもここで伊佐次は子供が駄々をこねるように囲いを出たいと云う・・・
囲いさえ出なければ安定した生活を送れるけど、おしまに再会したのを
きっかけに江戸への思いが湧いてきて、頭の中は江戸の思い出でいっぱい
なここ数日。帰ったとて何が待っているわけでもないはずなのに、
それでも江戸を恋しいと思う気持ちは治まらない。
伊佐次の自分でも抑えられない希望と苛立ちは、李花にとっては不安を
かきたてるだけでしかなく、なんか梨花が気の毒だなと思う。
伊佐さんの場合は、まぁ自業自得みたいなもんだから仕方ないって感じよ。

で、竹蛇がニョロリと顔を出すと卯之さんが部屋を覗き込む・・・
初見に比べてにょろ助との遊びが大胆になっているような気が(笑)。
卯之さんすごく楽しそうに遊んでて、足痛いんじゃねぇのか?って
伊佐さんに指摘されるほどだった。慌てて足をさする姿が可笑しい卯之さん。
『もうご案内は結構』と、おしまのマネもカマっぽくて可笑しすぎ・・・
なんか卯之さんすごく生き生きしてて、昔の2人はこんな風にふざけあったり
もしてたのかな?って感じがしますよね。2人だけの空気っていうのかな。

らしゃが塀外へおびき出されて仲間が慌しく動き回る中、ぼらがこそこそと
現れ拘束される。ぼらの抱く恐怖感がひしひしと伝わって、こっちもちょっと
緊張が高まる感じ。みんな怒鳴るわけでもなく、静かに言葉を発しているだけ
なのに、ぼらを恐怖のどん底へ突き落としているのが見てて怖いなぁって。
水牛先生なんて和やかな笑顔で『裏切ったら許さん』ですもん。でも目は
笑ってないんだよね・・・さそりもえらい迫力でぼらを威圧してて、コワイ。
傷を負ったらしゃが現れ、息も絶え絶えにぼらへ向かうと力を振り絞って
一刺し・・・『しぐれ坂を下りると泪雨じゃ・・・』倒れるらしゃは
恨めしそうな、悔しい思いで息を引き取ったのだろうと思える最期。
大切にしていた母親の存在を、自分を捕らえるための餌として利用するとは、
らしゃにとってこんなに侮辱的なことはないんじゃなかとu-tsuは思う。

らしゃの死後すぐにおしまと逢う伊佐次ですが、u-tsu的にはこの展開が
許せない(苦笑)なんで仲間が死んだばかりなのに神田明神の話で盛り上が
れるんだか?とついつい思ってしまうんですよねぇ。どちらかといえば
おしまの方が積極的に伊佐次を江戸へ誘っているようですが、なんか2人して
楽しそうに話しているのを見ると、『あんた、らしゃのことをどう考えてんの
よ?』と伊佐次に言いたくなってしまうのよ(苦笑)・・・
追われる身でありながら奉行所の人間を信用しすぎたという落ち度がらしゃに
あったのは確かだけど。でも、らしゃの死は伊佐次のせいだと言った李花の
言葉にも同感だなぁとも思うんだよね。なんとなく、このあたりから伊佐次は
現実から逃げ腰になっているのか?という気もしているんですけど・・・


おしまを囲っている和泉屋の旦那と卯之助・・・伊佐次のために、おしまを
遠ざけようとするけど、おしまのことも気がかりな卯之さんは話をしていても
ずっと迷いのある表情のまま。どこかで心苦しいと感じながらも、2人を諦め
させるにはこれしか方法がない。卯之さんにとっても苦渋の行動なんですよね。
今なら、ここの卯之さんの気持ちが理解できますね、これが卯之さんにとって
最良の方法だったんだなと。2人の為に自分が悪者になることなんて、卯之さん
にとっては大したことじゃなかったんだと思うし。ただ、恋の逆恨みと云われた
ことに関しては、流石に卯之さんもショックを隠せなかったようですが・・・
もちろん、おしまは卯之さんの事情を知らないし、悪意があっての言葉ではない
ので責めることはできないけど、幼馴染でありながら卯之さんがそんなことを
する人だって本気で考えているんだろうか?卯之さんの仕打ちよりも、おしまの
言動の方がヒドイとu-tsuは感じてしまった(苦笑)。だってさ、幼馴染って話
なのに卯之さんの人柄に関して理解できてないみたいなんだもんなぁ・・・
子供の頃は弱い卯之さんを庇って助けてくれたおしまなのにねぇ。
もしかして、それは単に同情してるだけで友としての重みはなかったのかも?

で、ここの『夢を見続けることはできやしねぇ』という言葉、それは卯之さんが
自身にも言い聞かせているのではないかなと、今回感じました。
生きる力をくれた伊佐を慕っていたのに、いつしか凶状持ちのお尋ね者となって
いた・・・それを知った卯之さんは伊佐に裏切られたように思っただろうし、
幼い頃の夢のような思い出が砕かれてしまったようにも感じただろうし。
だからって伊佐を恨むワケじゃないけど、どうしてそんな生き方になって
しまったのかという疑問や謎は、たぶん今でもあるだろうとは思う。
お互いをよく知っているとはいえ卯之さんは卯之さん、伊佐自身ではあり得ない
から、理由を知ったところで理解をするのは難しいんじゃないかなと。
それから、2回3回と観ても不明なのは『あの頃のおいらは八方塞』って台詞。
やっぱり八方塞の原因には伊佐とおしまも絡んでるよねぇ、必ず・・・
うーん、卯之さんの人生って複雑そうでよくワカンナイわねぇ(苦笑)。

伊佐次が酒を飲んでるところへ、らしゃを埋葬した卯之さんが・・・
卯之さんにとってもらしゃの死はやっぱり悲しいよね。ただの役人と無宿者って
関係じゃないし・・・数珠で祈ってる姿が印象的な卯之さんです。
自分よりも先に死んだらしゃと、約束通りに現れなかったおしまのことを考えて
悲しみと苛立ちの混じる伊佐次。卯之さんはそんな様子を見ながらおしまの出立を
いつ知らせようかとソワソワしている。自分で考えたこととはいえ、伊佐次に
知らせるには勇気が必要なんだろうなぁと。それに、出立を知った伊佐次が囲いを
出ようとしたら、それを自分に止めることができるのか?って不安も、多少は
あったのじゃないかとも思う。日に日に江戸への思いが募る伊佐を目の当たりに
してきた卯之さんだから、出て行く伊佐を想像することは容易いことだろうし。

で、隠してきた本音を告げる卯之さんですが、やっぱり観てると切ないですねぇ。
親友が言った一言だけで生きる力を得た卯之さん・・・もちろん、それだけが
力をくれたワケじゃないだろうけど、生きていく上での希望の根本にはなって
いたんでしょうね。子供の頃の卯之さんにとって、その言葉は必要不可欠な
ものになったんだろうと。自分を助けてくれる伊佐はいつだってヒーローだった
に違いなく。だから伊佐が凶状持ちと知った時にはショックも悲しみも大きかった
だろうし、何としてでも今度は自分が助けなくちゃと思ったのだろうし。
ずっと隠していた思いを爆発させた卯之さんなのに、それでも伊佐は出て行く。
伊佐さんにも、伊佐さんなりの強い気持ちがあったんですよねぇ・・・


いよいよ精霊流しが始まり・・・紛れて伊佐次はその場所へ向かう。
精霊流しの群舞は圧倒的な存在感ですね。静かな迫力で、捕り物の緊迫感を
更に増している感じがしますし、この群舞はこの作品に欠かせないと思う。
追っ手を気にして逃げる伊佐次・・・絶対に自分の手で捕らえると必死な卯之助。
2人に奉行所の人間が迫ってくる・・・卯之さんの、あまりに痛々しい姿を見てると
何だかじっとしていられない。卯之さんに加勢したくなるというか(^^ゞ
初見の時より、舘岡さんたち追ってが早い気がして、余計にハラハラドキドキで。

とうとう伊佐次は観念し、卯之さんは決して嬉しいわけじゃないけどホッとした
ような、苦しいような表情で・・・おしまの乗った船を指しながら、そっと合図して
伊佐次を逃がそうとする。でも舘岡の銃が伊佐次の背中を貫き、小舟に倒れこむ。
せっかく今まで伊佐次を見守ってきたのに、たった一瞬でその命を奪われてしまい、
卯之さんの無念さといったらどれほどのものだったか。自分の半身をもぎ取られた
くらい、心の痛みは激しかったのじゃないかと。まさかこの期に及んで伊佐次を
奪われるとは想像していなかっただろうし・・・舘岡さんを恨むのは筋違いだけど、
なんであのまま卯之さんに任せてくれなかったのかと思う。いや、確かにあそこで
舘岡さんが撃たなければ伊佐次は逃亡していただろうけど・・・でもそしたら
卯之さんはどうしていただろう?一緒に乗っていくとは思えないんだけど・・・
伊佐のような凶状持ちをワザと逃がしたら死罪にでもなりそうだよねぇ。
ひょっとして最初から一人で責任を背負い込むつもりだったの、卯之さん?
それともホントに江戸へ連れて帰って高い木の空へ上げるつもりだったのか?
どんなつもりでいたのか卯之さん以外に知りようもないけど、いずれにしても
幸せな結末なんてのはこの物語にはないんだろうなぁって感じかな。

沖に流される小舟に伊佐次と卯之助・・・『人前で泣くな』と息を引き取った
伊佐次を力いっぱい抱きしめる卯之さん。初見ではそれでも泣いていましたが、
今回はぐっと我慢している様子でした。ホントに静かで、宝塚らしからぬ
ラスト・・・バウ向きの作品かなとも思うんだけど、本公演でこういう芝居らしい
芝居が観れるってのも、たまには良いもんだなと実感。だって役者が揃ってない
と見応えないだろうし、今回は配役にほとんど無理がないと思うし。
多少ね、これを宝塚で上演する必要はないんじゃないかとも感じたりしましたが、
こんな芝居もできるのかっていう新鮮さが良いなと思うんですよね。

とはいえ、檀ちゃんとの絡みらしい絡みがないのはどうかなと思う・・・
幼馴染とはいえ全然そんな感じしないし、逆に余所余所しさが目立つような気が。
この2人の関係は幼馴染以上にはなり得ないだろうから、せめてもう少しそれらしい
場面なり、やりとりがあったら良かったのにと思うんだよねぇ。
どうせなら顔馴染みくらいにしとけばよかったのに(苦笑)・・・
お話が良いだけに、演出の技量に不満ありだよね。今まで演出した
公演よりは、今回まだマトモに受取れるけど、詰めが甘いっていうか。
もう一捻り欲しいなと、観客としては感じてしまうトコロがある。
大好きなわたるくん、贔屓の組だから余計にそう感じる部分は大きい
のかもしれないけど・・・ま、新鮮な舞台が観れたというのは嬉しいな(^^)


残す観劇はあと1回・・・楽数日前になるので、みなんなのテンションも
更に上がっているのではないかと想像しているんですけど。
でも伊佐の運命は変わることなく、卯之さんの腕の中で死んでいくのよね。
それを思うと気が重い公演だなと感じますが(苦笑)卯之さんの男の友情を
見届けたいと思うu-tsuです・・・




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