王家に捧ぐ歌

2003.9.19 東京宝塚劇場 初日 2階1列下手




第二幕 第三場 石壁

色んな思いと葛藤したラダメスとアイーダが
二人で生きてゆく決意をし、その日を夢見て笑顔で別れた後、
アイーダは現実に引き戻される。
父アモナスロが秘密を聞き出すか見張っていたのを知り
急に表情が硬くなるアイーダですが、それでも条件付きで
秘密を教えてしまう・・・
秘密を漏らしてしまうラダメスもいけないけど、
それを利用して自分の未来を手にしようとするアイーダも
ちょっとヒドイように思えます。
親子の縁を切り、自由になるにはそれしか方法はなかったのか?
自分の父親がホントに約束を違えないかどうか、
そんなに簡単に信用してしまって良かったのでしょうか?
目先の幸福に慎重さが欠けてしまっているように感じます。
そして兄たちがどんなにエジプトに復讐したいと強く思っているか
充分に知っていても、クギ刺すことすらせず逆に「虫けら」
扱いしてしまうというところが、この後の悲劇に後々
繋がっていくということに気付けないアイーダ・・・
もう頭はラダメスとのこれからで何も考えられないのでしょうけど、
もう少し慎重に行動していたら、もしかして・・・っていう
思いは拭えません。

第四場 石壁

石室の前で銅鑼が鳴ると、ファラオが祈りを捧げると宣言する。
ラダメスはアムネリスと目を合わせぬよう距離を保ち
ファラオの身辺を護衛している。
アムネリスはラダメスに避けられていることに気付き
じっと様子を伺う。
きっとあの宴の日以来、二人は言葉も交わすことなく数日が
経過していたのでしょうね。特にラダメスの方がアムネリスを
避けて、できるだけ顔を合わせないようにしていたのではないかと。
その間、アムネリスは何とかラダメスと一緒になれるよう
あれこれ思案していたように思えます。
この場でのお衣装がお揃いの色・生地なのも、
二人の婚約を発表する為に用意されたものということで、
とうとうアムネリスは権力を最大限に利用してきたなと・・・

何も知らずにアイーダとの旅立ちでちょっとソワソワ気味のラダメス。
その場を去ろうとするとファラオに呼びとめられ
思いがけない言葉を耳にする。

アムネリスを娶り ファラオとなるのだ

驚愕の表情を浮かべるラダメスに対し、この上ない喜びに
満面の微笑を浮かべるアムネリス。
その微笑からは正式にラダメスを手に入れたという
勝者の喜びが見て取れます。

ものごとは あるべき道をたどります

アムネリスの言葉に苦悩するラダメス。
だが無常にも銅鑼は鳴り続ける・・・
どうしたらいいのか思案するラダメスですが、
自分の心は決まっているのにどうして悩むのかちょっと不思議。
やっぱり公然と次期ファラオと名指しされては悩むしかない?
アムネリスはこれでラダメスを手に入れることができる、
なんて本気で考えていたのでしょうか?
公然とファラオに王女を娶れと言われたら
ラダメスも断らないだろうなんて思ったんでしょうかねぇ?
だとしたら、アムネリスは彼を見くびっていると感じます。
以前に、火あぶりにされても心を変える事は出来ない、
と宣言されているにもかかわらず・・・
権力に屈してしまう人間がファラオになって、
どうして国が安泰だなどと思えるのでしょうか?
アムネリスはラダメスの本質を見抜けていないのでしょうね。
ファラオはきっと、その辺のことを充分理解した上で
ラダメスを信頼し大切に思っているのではないかと感じます。
でもだからこそ、愛娘が好きだからという理由だけでなく
ラダメスがファラオに相応しいと考えているのだと思うし、
是が非でも自分の跡を継いで欲しいと願っているのだろうと。

アイーダ同様に嘘をつけないラダメスは覚悟を決めて
自分の気持ちを告白しようとする。
アムネリスは告白の内容を悟り、ファラオはラダメスが断るのを
承知で、それでも言葉を促す・・・
一同が静まりかえるなか、ラダメスが言葉を続けようとした瞬間、
ウバルト、カマンテ、サウフェが躍り出る。
一瞬の油断がファラオの命を奪った。
暗殺者達は自ら命を絶ち、裏切り者のおかげで成功したと
言葉を残す・・・エジプト人たちは誰が裏切り者かと
疑心暗鬼になり、アムネリスは父のもとへ駆けより涙する。
信じ難く思いつつも心当たりのあるラダメスは、
誰も互いを疑ってはいけないと告げ、
裏切り者は私だと苦渋の告白をする。
戦友メレルカとケペルは何故裏切ったのかと責め、
一同はエジプトの英雄が裏切り者だと知り驚き騒ぐ・・・

うろたえてはならない 私がファラオとなり国をおさめます!

愛する人が秘密を漏らしたことに激しく動揺しつつも
王族としての血がアムネリスを奮い起こす。
聖なる剣をラダメスの腰から引き抜き、剣と事実の重さに
堪えながらも愛する人に突きつけたアムネリス・・・
自分を心から理解してくれていた最愛の父と
初めて愛したラダメスを一度に失ってしまった彼女の
悲しみの大きさは如何ほどのものだったでしょう?
心は自分に向いていなくても、まさかこんなカタチで
裏切られるとは微塵も考えていなかったでしょうね。

ラダメスは自分が漏らした秘密によって、
このような結末になるとはやはり考えもしなかったでしょう。
戦友に両脇を抑えられ、苦しみと悲しみの入り混じった表情。
こうなって初めて自分が侵したミスの重大さに気付く。

裏切り者は閉じ込めておきなさい!

ラダメスを一切見ず、ファラオと女性の間で揺れるアムネリスの
表情が痛々しく感じます。
戦友も信頼する友が裏切り者だとは信じ難く、
でも本人の様子を見て事実だと思い知らされる。
何故こんな事になったのか・・・
何故こうなる前に相談してくれなかったのか?
悔しさと寂しさとで困惑な表情のケペルとメレルカ。
そんななか、アムネリスはエチオピア全滅を宣言する。

アムネリスの怒りは地を揺るがすとでもいいましょうか、
とても力強くてこの人には伴侶はいらないんじゃないかと
さえ思えてしまいます(苦笑)。
父を暗殺した者への怒り、エチオピアへの怒り、
自分への怒り、ラダメスへの怒り、争いへの怒り・・・
色んな怒りが詰まっているのでしょうね。
ここではラダメスに同情できないu-tsuでした(苦笑)・・・

第五場 エチオピア

エチオピアの大地に、無情にも死体が転がっている。
エジプトに囚われていた女たちがこの光景を見て嘆く。
アモナスロも目を見張り、滅んでしまったエチオピアを嘆く。
そんな父を見て、これがあなたの望んだものよと
冷たく言い放つアイーダ。
皆が築いた国を、あなた一人が滅ぼしたと。
アモナスロは今度こそ正気を失ってしまう・・・
父に言われた言葉を思い出すアイーダ・・・

人は自分の為になることしか行わない

実感したアイーダは、これからは自分の為に生きようと誓う。
自分の信念のために生きたいと・・・
短い場面の中に争いの結果が淡々と表現されていて、
人間の身勝手さとか争いの無意味さとかを感じるところです。

第六場A 処刑場(控え)

裏切り者として捕えられたラダメスは
孤独な心を抱えて時を待っている。
ファラオとなったアムネリスが訪れる・・・
呼びかけるがラダメスの返事は無い。
愛する人の処刑を前にアムネリスはとうとう自分を抑えられず、
ラダメスの首へそっと腕を回し抱きしめる。

私はファラオである前に 一人の女性です

アムネリスの言葉に驚きつつも、そっと彼女を引き離す
ラダメスがとても優しくて、悲しい・・・

私にあなたを殺させないで・・・

ラダメスはこの時、女性としてのアムネリスを初めて理解
できたのではないかと感じます。
深刻な状況のなかで、なんだか微笑んでいるように見えました。
アムネリスはこんなにも一途な女性だったのかと・・・
でもやっぱり彼女にはファラオとしての責務もあると
分かっているし、自分のミスは自分で責任を取るべきだと
理解しているラダメスは、アムネリスを諭す。

アムネリスに語りかけるラダメスの口調がとっても優しくて、
以前はこんな風に振舞っていたのかなぁという感じでした。
もともとアムネリスは気位が高くキツイところもあったと
思うのですが、それに対しても大きく包み込んでいた
ラダメスなのではないかと・・・
とっても自然な雰囲気な二人だなぁ〜と感じて観ておりました。

第六場B 処刑場

時間になリ石室の扉が開く。
最期に言い残すことは?と神官に問われ、一瞬考えた後、
ファラオに問いたいと申し出るラダメス。
大勢のエジプト人が非難の声を挙げ、ラダメスは
石室へ押し込まれる。
アムネリスはラダメスに言葉を続けるよう促す。
暗闇にのみこまれてゆくなか、

あなたは 世界が果てるまで 戦いつづけるのか

ラダメスの最期の言葉に、抑えきれず彼の名を叫び
後を追おうとするアムネリス・・・
ラダメスの伝えたい事はとうに理解しているんですよね。
ただ国を背負って立つ人間は理想や希望に流されて
いてはいけないので、その辺の苦しみをラダメスが
もうちょっと理解してあげてたら、ここまで悲劇に
ならなかったかもしれない・・・かな、とも感じます。

アムネリスの絶叫はラダメスにも聞こえたでしょうね。
こんな風に裏切ってしまった自分を、それでもまだ愛して
悲しんでくれる・・・彼女に対しての仕打ちを少しは
後悔したりするんでしょうか、ラダメスってば?
自分の信念の為に生きることを知っているラダメスですから、
希望を託すことはしても後悔はしないか。

二度と人が死に赴くことがないよう 地下牢を閉じなさい

ラダメスを処刑したことによって、争いで家族や愛する人を失った
者の痛みを初めて知ったアムネリスは、地下牢を閉じる。
アムネリスも、もう少し早くラダメスと心が通じ合えていたら、
こんなに苦しい思いをしなくても済んだかもしれないのですよね。
でも後悔しても始まらない・・・
アムネリスは自分が何を成すべきか、きちんと理解しています。

第七場 地下牢

地下牢の暗闇のなか、ラダメスは孤独感に襲われていた。
平和をもたらそうという希望の光りは、自分の手で消してしまった。
いや、違う。光りはアイーダだ、あの人こそ私の光りだ。
私は死ぬがアイーダは生きている。
生きてアフリカの大地で輝き続ける・・・それが私の望みだった。

アイーダを想い光りを取り戻したラダメスは、
死を前にして尚、幸福感でいっぱいだった。
そこへラダメスと呼ぶ愛しい人の声が聞こえる。
一瞬は耳を疑い訝る表情のラダメスだが、聞こえてくる声に
間違いはなかった。焦り、暗闇を這いながらアイーダを探す・・・
手探りで声を頼りにお互いを求める。
手が触れ合った瞬間、ラダメスは驚きアイーダは安心の表情。
処刑の前に忍び込みラダメスを待っていたアイーダ・・・

もう ここから出られない・・・

アイーダを抱きしめ悲愴に暮れるラダメス。
でもアイーダは嬉しそうに告げる。
あなたを愛しているから、生きるも死ぬも同じこと・・・
更に強く抱きしめるラダメス。

自分の為に行動を起こすと誓ったアイーダは、
ラダメスさえいればそれで幸せだと心から想っているんですね。
地下牢に忍び込むなんて無茶をしてでもずっと一緒にいたい。
とっても勇気のいることだなって感じるんですけど、
きっと本人は無我夢中で行動していたのでしょうね。
もうとにかくラダメスと一緒にいたい!
っていう一心での行動・・・ラダメスはちゃんと受止めてくれて。
祈ることならできるというアイーダの言葉に、
心を込めて願うラダメス・・・

ホントに心から願いが込められているように優しく語りかける
ように歌うラダメス・・・言葉の一つ一つが胸にグっときます。

第八場 地下牢(上と地下)

エジプトは二度と戦いに挑まない
我々は どんなに傷ついても平和への希望を失わない

毅然と胸を張り、何者にも異を唱えさせない力強さで
アムネリスはエジプトの民に宣言する。

辛く悲しい過去があって、それを踏み台にして国をおさめる
アムネリスはすごい女性だなぁって思いました。
ファラオとして沢山の責務に追われているから
過去に縛られているヒマがないのだとも思いますが、
女性の身では、やはり誰かに支えてほしいでしょうし、
守って欲しいでしょうし・・・
でも弱音を見せずにきちんと立っているアムネリスは偉い。
きっと黄泉の国に旅だったラダメスとアイーダが、
アムネリスをずっと見守ってくれているんだろうなぁって。
二人は目に見えないけど、アムネリスを大きく包み込んで
くれているんだろうなって思えます。
結局は同じ考え、気持ちになれたワケですし・・・
世界を変えるっていうことは簡単にできることではないですしね。
でもラダメスとアイーダの死を無駄にはしてほしくないし・・・
アムネリスのファラオとしての道は茨の道だけど、
見守ってくれる人がいるから大丈夫かなって思います。
見守るのは人ではなく魂だけど(^^)。



フィナーレ

エジプト、エチオピアの人々が混じって歌い踊るという
今までにない雰囲気のフィナーレでした。
トップバッターはウバルト、カマンテ、サウフェ、
ケペル、メレルカの5人。
役名は関係なくエジプト人とエチオピア人って感じで、
争いがなく民族が一緒になるっていうことを考えさせられる
という印象がありました。

檀ちゃんを中心に2つの国の女性が可愛らしく歌う場面でも、
やっぱり同じような印象をうけましたねぇ。
みんなの笑顔が良ければ、感じることが更に強くなりますね。

大階段の男役によるダンスでは変わった始まりが斬新でした。
わたるくんはグレーの燕尾で頭にはターバンを巻いて。
歌も良いんだけど、できれば男役群舞の時は
踊りに徹してほしいなぁと思いました・・・
ただでさえ今回は踊っていないので、フィナーレでは
少ないナンバーながらもいっぱい踊ってるのを観たいのよ。

アイーダから雰囲気がガラリと変わったとうこちゃん。
赤いスカート姿がキュートでした(^^)。
なんて細いおみ足なんでしょ〜。
オペラグラスで覗いてて羨ましくなっちゃいました・・・

今回はロケットのお衣装もゴ〜ルドでしたねぇ。
これはエジプトから調達したのでしょうか(^^)。
アムネリス様からの贈り物か?

ロケットのラストから次の場面への転換が今までと違う
構成で、へぇ〜っと感心しました。
二幕の宴で歌われた「美人選び」の曲をわたるくんが歌う。
宴同様とっても明るくて手拍子で客席も参加(⌒ー⌒)。
星組のみんなに囲まれて、楽しそうに歌うわたるくんの笑顔が
とっても印象的でした。

そして、楽しみにしていたデュエットダンス。
舞台セットの移動に必要な装置があって転んで
怪我をしないか心配でしたが大丈夫で良かったです。

檀ちゃんの表情がとっても良くて、それを見ている
わたるくんも自然と表情が良くなるというか・・・
「アムネリスの夢」っていうような印象が強くて、
こんな風にラダメスと過ごしたかったのかなとか、
天寿をまっとうしたアムネリスが黄泉でラダメスと
過ごしているのかな等、考えて観ていました。
いずれにしてもこの場面は『アムネリスとラダメス』
っていう感じが強いし、そう考える方が自然かな
って思えるのですが・・・
とにかく、ステキなデュエット場面でした。

パレードの最後で大きな羽を背負い、白いお衣装の
わたるくんを観て、「わぁ〜TVと同じだぁ〜♪」と
思わず感動でした(^^ゞ。
出演者の一人一人がステキな笑顔でのパレードでした。

全員が揃った星組は10年振りに観劇のu-tsu・・・
当時を思い出して、星組らしさに加えわたるくんの
良さが加わった素敵な組になってるなぁって感じました。

記念すべき日を体験できて、
ホントに、ホンっっっトに良かったです(^0^)v

次の観劇が楽しみです〜♪



長らくかかってしまった初日感想・・・
一応、これにて終了ってことで(^^ゞ
役に関しても書く予定でしたが、あまりにそれ以外が
長くなってしまったので、次回観劇後に
合わせて書きたいなぁと思っておりますm(_)m。

こんな駄文にお付き合い下さり有難うございました。



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