え〜〜・・・
「愛か?栄光か?」っていう言葉が、どうしても気になってて、
それから、アイーダに出会う前から、戦う事への疑問が
エチオピア戦 前夜−戦う理由−
エジプト・・・
戦争の女神セクメトの神殿内、第2の広間。
窓はなく数本のロウソクだけが灯され、
セクメト神の像がかろうじて見える程度の明るさしかない。
そんな中で、ラダメスは明朝の出撃を前に神殿で祈りを捧げていた。
『いよいよ明日か・・・近年にない大きな戦となるだろうな。
エチオピア王アモナスロは非道な人間だと聞いている。
どんな手で攻撃を仕掛けてくるのか・・・我がエジプトが負けるとは
思わないが、油断はできない。なんとしても勝利し、近隣の不安を
取り除かなければ・・・だが、なぜ人は戦うのか?
この戦いの先には、一体何が待っている?』
ラダメスは戦への疑問を口にしたが、すぐに気を取り直し、
最後に短くセクメトの像に祈りを捧げると立ちあがった。
『セクメト神への祈りは、もう終ったのですか?』
背後からの声に素早く振り向くラダメス。
純白のドレスに金糸で豪華に織られたケープを纏ったエジプト王女
アムネリスが立っていた。
『アムネリス様・・・』
すぐさま跪き控えるラダメス。
『ラダメス、顔をあげて、立って下さい』
威厳に満ち、この世で最も美しいと称され、手に入れられないものは
無いという恵まれた女性・・・大国エジプトの王女アムネリス。
その方に言葉を掛けられ否と云えるはずがあろうか?
一瞬は迷ったラダメスだが、云われた通り立ちあがる。
美しい微笑が自分を見上げていた。
『そして2人きりの時には、どうかアムネリス、と呼んで下さい』
高貴な香りを漂わせ、ラダメスの胸に頬を近づけると
そっと寄り添うアムネリス・・・
その行動に戸惑うラダメスだが、次第に夢の中にいるような錯覚に捕われ、
自分が何をしているのか理解しないまま、アムネリスを抱きしめる。
『アムネリス・・・・』つぶやくような小さな声で王女の名を呼ぶ。
想いを寄せる戦士に抱きしめられて幸福な瞬間を得たアムネリスは、
嬉しさで頬が紅潮し、何度も戦士の名を呼ぶ。
アムネリスの香りに夢見心地だったラダメスは、アムネリスが自分を
呼ぶ声にハッと我に返り、咄嗟に身体を離した。
『私は何を・・・?!お許し下さい、アムネリス様!』
跪いて許しを請うラダメスに、何故?という表情のアムネリス。
『どうして謝るのです?ラダメス。私は、今、とても幸福でしたのに』
『いけません、アムネリス様。私は一介の戦士です。
そんな私がファラオの娘に触れるなど、あってはいけない事です』
後悔した苦しい表情で答えるラダメス・・・
『ラダメス。聞いて下さい。私はいずれファラオと成るべき
戦士に嫁ぐことになります。強く、逞しく、英知ある勇者・・・
ラダメス。あなたなら成れると、私は信じているのです。
私の気持ちは分かっているでしょう?』
アムネリスはラダメスの手を取って立たせ、そのまま両手で
包み込むようにそっと握った。
『ラダメス。私のことを、どう想っていますか?』
思いがけないことを問われ表情が硬くなるラダメス。
しばらく考え込んだ後に、『分かりません』と答えた。
『分からない?』
『アムネリス様。気高く、美しい貴方を、私は誇りに思っています。
今は、それしか申し上げられません・・・』
ラダメスにとっては、精一杯の言葉だった。
『分かりました・・・でも、嬉しいわ。ラダメス。』
期待していた言葉とは違う返答を得て、少し残念に思いながらも、
苦渋の表情で自分の気持ちを述べたラダメスに、微笑で応えたアムネリス。
『さぁ、行って下さい。ラダメス。私はこれからセクメト神に祈ります。
あなたの、エジプト軍の勝利を信じて・・・』
セクメトの像をじっと見つめ、ゆっくりと頭を垂れ祈りを捧げる
アムネリスの姿を背に、ラダメスは神殿の中庭へと続く扉を開けた。
辺りはすでに暗く、星空がキレイに広がっている。
ラダメスは自室へ戻りながら、神殿での出来事を考えていた。
アムネリス・・・
威厳に満ち、気高く、美しく、そして・・・冷たさを持った王女。
氷のような眼差しが、心を見透かしてしまうのではないかと
思うことがある。初めて出会ったときも、そう感じた。
だが、あの出会い以来、彼女は私に興味を持ち、好意的に接して下さる。
身に余る事だ・・・戦うこと以外に何もない私に・・・
あれから多くの月日が流れた。
アムネリスの気持ちは分かっているつもりだ。
だが私の気持ちは?アムネリスを愛しているか?
分からない・・・誇りに思っていることは真実だ。
だが、愛とは違う。私の想いは、まだ愛とは呼べぬ・・・
そして、アムネリスとは身分が違うだけではない。
出会った時は気付かなかったが、彼女とは考え方も、理想とするものも違う・・・
私たちが見る未来は、きっと違う世界だ。
私は今、戦う意義を見出せないでいる・・・
勇敢な戦士だったという父の跡を継いで同じ道を歩いているが、
何故か心が晴れない。
戦っても戦っても終りが来ない戦・・・戦とは何だ?!
平和へと続く道標なのか?
だが、父も母も、その戦で命を奪われた・・・
戦いに疑問を持つことは、エジプトへの、ファラオへの裏切に等しい。
だが、戦士として生きるには、戦うことへの理由が欲しい!
戦えない戦士を、アムネリスは何と思うだろうか?
もし、アムネリスが私と同じ未来を見ているなら・・・
私と同じ世界を見てくれるなら、私は・・・
私は、迷わず彼女を迎えてファラオと成るだろう。
だが、それをアムネリスは拒否するのだろうな・・・
時がきて、アムネリスが望めば、私は否応なしに彼女のものになるだろう。
ファラオに、その娘に、否を唱えることはできない。
私は一体、何の為に生きるのだろうか・・・
明日の戦いで、勝利以外に私が得るものは、何かあるだろうか?
もし、何かを得られたなら・・・求める答えが出たなら、
私はもう迷わないだろう。
答えを信じて、突き進んで行くだけだ!
父の跡を継ぎ戦士として生きてきたラダメスは、戦いへの意義を
戦場で見出そうと決意し、それ以上の思考を拒否した。
ラダメスが考えにふけっている頃、神殿内のアムネリスは
祈りに集中できずにいた。
あの人といると、いつも心が乱される・・・
私の心はとうに決まっているのに、ラダメスはそれを受け入れてくれない。
何故なの?ラダメスにとって、私という人間は何の魅力もないのかしら?!
いいえ。いいえ、そんなことはあり得ないわ。
私が嫁ぐ戦士はラダメスだけ!
そして、ラダメスが妻として迎えるのは、この私!
これはもう決まっていることだわ。
ファラオも私も、それを望んでいるのよ。
異議を唱える者は誰もいないわ・・・
明日の戦で、ラダメスが無事に戻るよう祈らなければ・・・
ただ一人、私のファラオとなるラダメスが、勝利を手に帰還するように・・・
だがこの戦いで、2人の運命を大きく変える答えが待っているとは、
この時、ラダメスもアムネリスも、予感すらしていなかった・・・・
ラダメスがアイーダと出会う前日という設定で、
こんな想像をしてみました(苦笑)。
お粗末な内容で申し訳ないですm(_)m・・・
きっとラダメスはアイーダと出会うまでは、アムネリスと
それなりの仲だったのではないかと・・・想像してまして。
本格的な恋愛というトコロまでは、まだ気持ちが入っていない
と思うんですけど、お互い子供じゃないんで、何らかの
アプローチはあったんだろうということで・・・
特にアムネリスの方からね(^^)。
でも、濃厚なアプローチは、流石にないよねぇ(苦笑)?
ラダメスにはあったと思うので、その辺の気持ちも勝手な
解釈で入れてみました。で、両親については、これも勝手ながら
父親はファラオの信頼厚い戦士だったという風に想像してます。
ラダメスは生まれながらの戦士っていう印象が強いので、
それならやっぱり父親は戦士だろうなと、単純に(笑)。