王家に捧ぐ歌


2003.10.28 東京宝塚劇場



My楽感想Part.2ってことで、
いってみたいと思います(^0^)v

まずファラオ・・・中日までとは違う役作りでした。
役作りが変わったのではないかもしれませんが、
特に一幕ラストのラダメスの願いを聞き入れる場面で、
かなり苦悩している様子が表に出ていました。
話し方も声にその苦悩が出ていて、神に誓って約束
したから聞き届けるというのではなく、
とても大きな賭けにでる不安とその先にあるかもしれない
平和への希望とが入混じって、その間ですごく
気持ちが揺れているというか・・・
今まで以上に冷静さを欠いているようなファラオが
人間らしく見えて、違う一面が発見できたかな。

ファラオの夢って、希望って何だったんでしょうね?
やっぱり愛娘が、想う人と一緒になり国を治め
苦労なく幸福に暮らすことでしょうか?
それとも単にエジプトの更なる繁栄?
ファラオにとっての平和ってそもそもどんなものなの?
などと、ファラオの気持ちに対する疑問があります。
自由なく国の為、民の為に王として君臨していますが、
どんなことを考えているのか、分かり難い人ですよね・・・
父親としては、娘をよく可愛がっているのが分かりますが、
その他に関してはちょっと不鮮明な部分が多いような?
捕われたエチオピア人がいたぶられているのを見ていても
顔色一つ変えないし、それが当然のような態度でいる。
個人的に偉大な王のイメージは公明正大で慈悲や礼節を
良く理解しているという感じなんですが、
この公演のファラオにはそういうイメージが無いですね。
でも表情はいつも穏やかで、温もりを感じる・・・
そこからは寛大で偉大なというイメージがあるけど、
数少ない行動を見ているとなんか芯がないようで・・・
感想を述べるのに、すごく難しい人物です(苦笑)。

エチオピア解放を許すことにしても、あれは王として
認めちゃいけないことだったんじゃないかと思うんですよね。
ラダメスの願いは聞くけど、でも国の安泰というか秩序を
乱す可能性がある願いは話しは別ということで、
頑として拒むべきだったような・・・・
考慮すべき余地はあるとしてだけど。
いくら神に誓って願いを聞くといっても、その願いの
せいでファラオが殺されたとなれば、神がエジプトを
裏切ったということにもなりそうですし。
そういう予言は出来ないのかなぁ(^^)?
神官もお告げは聞いてないのかしら、
ラダメスの願いを聞いてはファラオが死ぬ〜とか?
ラーの息子という称えられ方をしていますが、
自分の感情で願いを聞いてしまうあたりは
やっぱりファラオも一人の人間なのよ、ってことですね。


アモナスロはそんなに変化なく、でも安定度はNo.1です。
一幕ではすごい目つきでエジプト人を睨み付け、
その憎悪にこっちもビクビクしてしまう感じです。
我が子と再会しアイーダが抱き付くと、この人も親なんだな
と思う表情が見れました。
ただアイーダが自分の命と引き替えに助けようとすると、
表情が一変して激怒するアモナスロ。
アイーダの態度からエチオピア王女としての毅然な心構えや
振るまいが消えていることを知って突き放す。
囚人のように懇願するアイーダに腹が立ったのと、
王の娘が慈悲を請うなどアモナスロにとっては
耐えがたい侮辱に感じられたのかもしれませんね。
自分の娘が親の為に命を引き替えてもいいというくらい
愛情を示しているのに・・・

同場面で平和への気持ちを訴えるラダメスに呼応して
歌うアイーダの様子を見て、目を見開き驚くアモナスロ。
二人を交互に見て一人でニヤリとするのが
何とも薄気味悪かったです(苦笑)。
これは使える、と思ったんでしょうねぇ。
お互いに惹かれ合うのを知って、自分の娘さえも
復讐の道具として計算するアモナスロはどこまでも
卑劣な王ではないでしょうか。
アモナスロの場合は国がどうとか民の為だとか
そういう感情が一切感じられませんよね。
自分の為にしか動いていないという・・・
歌詞の中にもあるように、それがアモナスロの
生き方なんでしょうねぇ。
よくそれで王が務まってたなと・・・
でも結局は国を失い、民を失い、家族を失って
狂気の闇へ陥ってしまう。
強大な力に翻弄されることがなくなり、
現実世界から解放されることがアモナスロにとって
どう影響するのか?
ある意味、幸運のような気もしますねぇ。


息子で王子のウバルドは、どっかオカシイです。
王子っていう誇りとかが感じられない。
前回までは復讐に捕われて、そのことで頭がいっぱい
なんだろうなぁと思っていたんですが、
よく考えれば何か違和感が出てきたこの頃(苦笑)。
王子として育ってきたからには、すぐには消えない
品格とかあるはずなんですけど・・・それを感じない。
ワガママ的な要素は何となく伝わってくるんですけど。
アモナスロやアイーダにしても王族という品格は
あまり感じられないんですけどね。
どちらかといえばサウフェの方が王子っぽいかも。
ちょっと夢想家的なところがあって、世離れしてると
いう雰囲気があって良家の坊ちゃんタイプ。
ウバルドが夢でお告げを聞いたというところでは、
夢見心地な表情をしてて思考がどっか飛んでるという
感じもしますが、そういうところがあまり世間を
知らない王子っていう印象なんですよね。

ウバルドたちはファラオ暗殺に成功した後に自決しますが、
他の登場場面でも誇り高い言動や仕種があったら
まだマシだったかなぁと思います。
そもそも何の為の復讐だったのかというのが分かり難い。
もうただただエジプトが憎くて憎くて、やっつけなくちゃ
気がおさまらないという感じにしか見えなくて。
先生の演出指導でもあるのでしょうけど、脚本を読んだ
だけでは今のウバルドのような印象は受けませんが?
でもウバルドはそれでイイのかも?
常識もなくなるくらい復讐に燃えているってこと
なのでしょうか・・・理解できない。
どうしてあのような役作りになったのかと、
新たに疑問となってしまいました(苦笑)。

カマンテは相変わらず野心的に見えます。
エジプトへの復讐心はあるものの、自決せずに
更に野心的に向上していきそうな勢いを感じますね。
でも実際には気持ちが純粋なのかな、とも感じます。
結構、一途な若者だとも思うし。
アイーダを責めている姿を見て、一瞬、アイーダの事が
好きだったのかな?なんて思ってしまいました。
身分違いと分かっているし、無理矢理自分のものにしよう
とかっていう気はないんだけどね。
アイーダを責めるのも、想っていた人が敵の囚人として
甘んじているのが許せなくて、目を覚ましてほしくて
という感じかもしれない・・・なんて。
余談だけど、カマンテには逃亡してほしかった。
なんかデカイことをして欲しいなぁと思っちゃう(苦笑)。

サウフェは大人しい中にちょっと普通と違う夢に走って
しまうような感情があるように感じます。
夢想家なところがあるんじゃないかと・・・
一幕でラダメスが解放を願い出ると一瞬驚きの表情ですが、
それがすぐに笑顔に変わるんです。
もう自由になった自分や国を想像しているようなんですね。
でもエジプト人の猛反対が始まると、現実に引き戻されて
苦しそうな表情でラダメスを見上げ、何故そんなことが
云えるんだこいつは?!っていう感じで。
表情の変化がサウフェの心情を分かり易く表現できていて、
ああサウフェは復讐とかよりもただ自由になりたいんだなぁ
っていう気がしました。
確かにエジプトを憎んでいて復讐を果たしたい気持ちは
あるんだけど、それ以上にただ自由になりたいっていう
気持ちの方が大きいような気がするんですよね。
でも自決しちゃうってことは、やっぱり復讐だけが
目的だったのかなぁ?
でもあの時の精神のぶっ飛び具合によっては、
夢想家らしい行動のように思えなくもないかも?


ケペルは優しくて懐が大きいですね。
それだけにラダメスの裏切に値する行為には
我が耳を疑うほどのショックだったのではないかなと。
アムネリスに云われメレルカと二人で取押さえた時には、
裏切られたという怒りが大きかったけど、
きっとその後ですごく悩んだことと思います。
親友としてのラダメス、戦士としてのラダメスを
よく分かっていたつもりなのに、実際には何も気付いて
あげられなかった・・・そういう気持ちもあっただろうし、
どうして自分を頼ってくれなかったのかという疑問も
生じただろうし・・・もし気付いていたら何か手助け
できていたかもしれないのに。
自分を責めてしまうというか、そういう繊細な気持ちの
持主なのだろうなぁと、観てて感じました。
処刑の時間になりラダメスの前に姿を現したケペルは、
無表情に近い様子で焦点があっていない・・・
深い悲しみに包まれて心ここにあらずという感じです。
そしてラダメスが地下牢へ入れられ、アムネリスが後を
追おうとするのを止めるケペル。
たぶん世界中でラダメスの死を一番悲しんでいるであろう
アムネリスの叫びを、その魂ごと受止めるように制す。
この懐の大きさが、いつかアムネリスの悲しみを
解してくれるのではないかなぁと思うu-tsuです。

メレルカはある意味カマンテと似たような部分が
ある感じだなぁと、ちょっと思います。
野心的っていうか、向上心が強いっていうか
そんな印象が観ててありますし、他の2人との
バランスをそういう設定で保つ役なのでは
ないかなぁと思いました。
メレルカは3人の中では一番年下だけど、
行動力は年長者に負けてないし、剣の腕前も
ラダメスと同じくらい優秀なんじゃないかと思う。
じゃぁどうしてあの時将軍になれなかったのか?
メレルカは血気盛んで冷静さに欠けるところが多いから、
じゃないかなぁと思う・・・(苦笑)。
一番の理由はアムネリス様のお気に入りではないからか(^^)?
演じる礼音くんはおっとりした印象が強いから、
もっともっとメレルカの血気盛んな部分を出しても
良かったと思います。遠慮してるっていうのでは
ないと思うんだけど、ちょっと物足りなさを感じてしまう。
でもラダメスが裏切ったと聞いた時はやっぱり怒りが
前面に出ていて、全く理解できないという様子が
表現されていたり、表情と行動での表現が
メレルカを上手く表わしていたりするのは良かったかな。

それにしてもラダメス、ケペル、メレルカの並びって、
大きくてキレイですねぇ〜(^ー^;
これも星の伝統よねぇ〜Y
いや、もちろんそれ以外の素敵な並びも
いっぱいありますけど・・・


主な人物以外では・・・
神官長の英真さん。何をやっても上手い。
影の権力者っていう印象が強くて、時にはファラオさえも
操ってしまうんだろうなぁなんて、勝手に想像してます。
他の神官もイヤ〜な部分が上手く出ていてイイ味出してます。
一幕ラストのエチオピア人を殺せの大合唱では
表情が一番すごいですよ(苦笑)。
戸惑っている様子のラダメスと目が合うと
ニヤリと残酷な笑みが顔に広がるんです〜、コワイですよ。

ファトマさんたちエチオピアの女性も、
みんなが自分の生立ちをきちんと持っている。
そういう熱演が浮き立って悲惨なエチオピアの
状態を表現するのに役だっているなぁと思いました。

エジプト王女の女官のみなさん、コワイですね(苦笑)。
アイーダをいじめてる場面は女性のネチっこい
部分が前面に出てて、改めて女ってコワイ・・・
なんて思っちゃいました(^^ゞ
「エジプトはすごい 強い」の歌はお気に入り。
ああいうテンポであっけらかんとした歌に、
宝塚だなぁ〜と、何故か安心してしまう(笑)。
でもアウウィルさん、ターニさん・・・
もう少しお腹から声をだしましょう(苦笑)。
アムネリス様をお手本に頑張るのだぁ〜!
期待してるんだからね(^^)。

新公でアイーダを演じた麻尋しゅんさん、
写真で観たら可愛いアイーダでしたが、
本公演では意外と男らしいお顔でビックリ〜。
まだまだ少年ぽさがあるのは当然として、
それでも精悍な若者っていう印象がします。
先が楽しみな下級生ですねぇ(^ー^)。


その他、星組のみんなの頑張りがあってこそ
メッセージが多くの人に伝わる公演・・・
舞台の端の一人一人からのパワーが
客席に語りかけるものは大きなメッセージ
となって、観客一人一人に問います。
u-tsuも色んなことを問われ、自分なりに
考えて過ごしました。
疑問は多々あれど、それは作品の進行上の
ことで、伝えたいメッセージはきちんと
伝わっています。

組のみんなと専科の方とが一つになって
作り上げた「王家に捧ぐ歌」。
ホントに良い作品を、大好きなわたるくんを
真中にして観られたことがとても嬉しいです。

星組、バンザーイ!!\(^0^)/



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