春麗の淡き光に−朱天童子異聞−
Joyful !!

2003.4.7 PM1:30公演

舞台は平安朝末期ということなので、
10世紀終りから11世紀初頭ってところですね。
藤原北家が世を牛耳っている時代です。

野心剥き出しにこの世を我が物にしようと振舞う
兼家ら貴族たちの専横を正そうと立ちあがった
同じ藤原の血を引く保輔・・・
内容は、日本版「黒薔薇」ってとこかな(^^)。
もちろん、ラストは全然別物だけど・・・

お話を簡単に説明すると・・・
兼家ら貴族達のやりたい放題を見過ごすことができない
正義感強い保輔が、「朱天童子」と名乗って藤原北家に
ゆかりある家や人ばかりを襲って、その専横ぶりを正そうと
立ちあがりました。
ところが朱天童子追討を命じられた検非違使の別当・野依知親
によって、左頬に深い刀傷を負わされた保輔は窮地にたたされます。
傷ついた容姿のまま公の場へ現れれば、朱天童子の正体が分かってしまう。
そこで保輔は自分に瓜二つの弟、保昌に身代わりを頼み、
自分は世を欺いて身を隠す。
だが保輔に想いを寄せる源頼光の妹・若狭だけは、
一目で保輔ではないことに気付いてしまう。

ある夜、若狭を呼び出した保輔は、自分が朱天童子であることを
打明け、消すことの出来ない傷を負ってしまったからには
藤原の名も捨て、朱天童子として生きていくことを告げる。

若狭の兄で保輔とは親しい友でもある頼光は、
知親の代りに朱天童子追討を命じられる。
保輔の身代わりとなっていた保昌は、兄の志は理解できるものの
その行為によって自分も藤原を名乗ることはこの先できるはずもなく、
それならば姓を改め頼光の臣下となり、自分の手で兄を
葬ってやりたいと覚悟を決める。

保輔は仲間との別れを決意し、朱天童子の右腕ともいえる
鬼童丸一人を連れて大江山へ赴いた。
やがて頼光が、四天王と大勢の兵士を連れて大江山の麓へ到着した。
頼光は鬼童丸に案内され僧の格好をしている保輔と逢うと、
二人は熱い思いを語合った。
思い残すことはないかと訊ねられた保輔は弟のことを頼光に頼み、
若狭を幸せにして欲しいと云う。
自分にできることはここまでで、あとは頼光が世を正してくれと
首を差出す保輔・・・親しい友を討ち取ることができるはずもなく、
だが自分の役目を果たさなければならず、苦渋の決断を迫られた
頼光は思いきり刀を振り下ろす。

「朱天童子は今日限り死んだ。源頼光が討ち取った」

頼光の叫びが響き渡る。
信じられない表情で頼光を見つめていたのは保輔と鬼童丸だった。
頼光は保輔の首ではなく、髪を束ねていたところを切ったのだった。
朱天童子の亡骸は崖へ落ちたことにし、そのように
取り計らうよう鬼童丸に命じた頼光は、保輔の意志を継ぐことを誓い
二人の前から去って行った。

一足遅れで源頼信が妹の若狭を連れて現れた。
保輔の居場所を尋ねるが、もはやこの世にはいないと
聞かされた若狭は泣き崩れてしまう。
鬼童丸は「保輔が好きだった笛の音を、手向けに吹いて欲しい」
と申し出る。ちょうどその時、現れた僧の顔を見て頼信は驚くが、
鬼童丸の表情を見て状況を推察した頼信は僧については
何も云わず、「せめて供養のために笛を・・・」と若狭を促す。
鬼童丸に案内されその場を後にした頼信と若狭をそっと見送る保輔。

風に乗って聞こえる笛の音に耳をすます保輔・・・
親しい友・頼光への感謝、愛する若狭への想いを胸に、
これから始まるであろう新しい時代に思いを馳せて、
保輔は出発の決意を新たに誓うのだった・・・

コムちゃん(朝海ひかる)は今回二役です。(三役かも?)
藤原保輔と保昌・・・そして朱天童子。
一番最初の童子の時だけは白い布で顔を隠していました。
この演出はまさに「黒薔薇」(^^)。
黒薔薇の時も早替わりが大変だなぁって思っていたのですが、
それを着物でやってるコムちゃんはもっと大変ですねぇ。
上手に引っ込んで早替わりして下手から登場というのは、
さぞかし大忙しだろうと思うんですが・・・
着崩れもなくキレイに変身されていました。

正直ね、心配でした・・・コムちゃんの主役。
コムちゃんは線が細いので、主役でどこまで踏ん張れるのか
っていうのがあって、大丈夫かなぁって・・・
でもそんな心配はいらないのね(^^ゞ。
ちゃんと二役を全うしてました。
立ち居振舞いもキレイだったし、舞台での周りとの綱引きも
イイ感じに調和してた
と思えますし。
始まったばかりですからね、これからもっともっと
イイ味出してくれるのではないかと思います(^^)。

舞風りらちゃんは若狭役。
この方は、な〜んて可愛い笑顔の持ち主なのでしょう(^0^)。
明るく元気なイメージかと思うと、可憐な少女のようなイメージもある。
若狭の出番はあまりありませんが、限られた場面で保輔に対する
想いを表現し、ずっと二人が恋仲だったことを違和感なく観客に
アピールするのは難しいと思うのですが、コムちゃんとの息もピッタリで、
保輔はこの若狭だから好きだったのかなぁと・・・

身代わりの保昌を一目で、ちょっとした言葉で見破ってしまう場面が
印象的だったなぁ。「姿かたちは同じでも、そのお声が違います!
ってところは特に記憶に残ってます。
きっとu-tsuなんかじゃ、風邪気味?って聞いて終っちゃうかも(苦笑)。
日本物のお衣装もよく似合っていて、キレイでした。
今度はもっとコムちゃんと絡める役が観てみたいですね(^^)。

今回、主役以外に印象に残っているのは 未来優希さんの野依知親役。
朱天童子追討で致命的な傷を負わせることに成功するが、
自らも足に傷を負い、朱天童子を取り逃がしてしまう。
兼家に検非違使の職を解かれた知親は保輔を恨み、
自分の名誉の為にのみ朱天童子を捕えることを誓う・・・
ここの 恨みを込めた誓いは迫力があって、圧倒です。
職を解かれた悔しさが保輔への恨みに変っていく過程の
表現は見応えあります。コワイです(^^;。

そして、とうとう保輔を見つけ斬りつけようとするのを
妻に止められ諭され、情けというものを知った知親は
人違いだと云って保輔の前から姿を消します。
この場面の 静かな迫力は感動です。良い場面です。
妻役の愛 耀子さんが、当時の女性の従順さに強さを加えた
お芝居で知親を盛り立てている感じが好印象で、
良い場面
になってます。ここで涙した人も多いと思います(^^)。

貴城けいさんは源頼光。 意外に出番が少なかったですね。
保輔の友としての心情と、若狭の兄としての心情、
朱天童子の追討を命じられた左馬頭としての立場を
表現するにはちょっと少ない出番だったと感じます。
知親も出番は多くないと思いますが、自分の怨みごとの
為だけに保輔に関わる知親は一つの事に集中できると思うので、
そういう点では頼光は役作りが難しいのではないかなと・・・
頼光は抑える役どころですしね。
現代だったらストレス溜まってるんじゃないかと(苦笑)。
でも、最後の 大江山での保輔とのやりとりは男の友情が
キレイに表れていて、ここでまた感動
が訪れます(^^)。

しいちゃん(立樹 遥)は鬼童丸。
朱天童子の右腕として一団をまとめる役でもあります。
大きな見せ場はないものの、常に保輔の傍に付従い
保輔の苦悩を間近で感じているので、保輔の痛みを
一番理解しているのだろうなというのが、鬼童丸の
ちょっとした表情から伺えます。
大江山で頼光に救われたときの表情、頼信が保輔が生きている
ことに気付いた時の鬼童丸は、これからは自分が保輔を
守っていくんだという決意の表情というか・・・
保輔と道を共に生きていく決意があるっていうか、
そんな風に思えました。

ちょうど2年振りの雪観劇で、またしても日本物だったのですが
懐かしいお顔あり、初めましてのお顔あり・・・
2年は長いような短いようなって感じです。
やっぱりというか、雪組は日本物キレイですねぇ。
多くの上級生が日本物に慣れているせいか、下級生も
化粧が結構キレイだし、立ち居振舞いも危なげなく観れました。
以前の日本物によくある雰囲気と内容の物語が、
新鮮に感じられて意外と楽しく観れました(苦笑)。
確かに昔の再演物ではありますが、演じる人も、そのカラーも
違いますから、自然と新鮮さがでるのかもしれませんね。
コムちゃん2年前は現代の男の子だったし(^^)。

実はu-tsu、お芝居よりもJoyful!が観たくてチケット取りました(^^ゞ。
藤井先生の作品は「GLORIOUS!」以来2度目なのですが、
久々に観た宝塚とGLORIOUSの新鮮さにすっかり圧倒されまして、
再び藤井先生のショーが観れる日を楽しみにしていました。
昨年、花組で上演された「カクテル」は都合つかなくて観れなかった・・・

で、Joyful!ですが、6人の音神のアカペラから始まります。
これはグロリアスのアメリカン6と同じような役で、
フィナーレまで続いています。
美穂圭子ちゃんを筆頭に、歌が上手な6人が扮しています。
このショーは各章ごとに楽器をモチーフに作られていて、
その楽器ごとのイメージが無理なく表現されていたと思います。
第1章はオーケストラ・フルバンドと題して、
お衣装は黒に金のラインの燕尾とシックでゴージャスですが
場面としては明るい雰囲気です。
ここは娘役も同じ燕尾で、途中からダルマのお衣装になります。

この場面の後に短いんですがコムちゃんとりらちゃんのデュエット
があって、その時のりらちゃんの お衣装をよく観ようと
オペラグラスを使用したら、総スパンのお衣装にちょうどライトが
反射してキラキラとえらい眩しくて、眼がつぶれるかと思った(^^ゞ

皆さんもオペラグラスの使用には気をつけましょう・・・
さすがに、失明はしないと思うけど(苦笑)。

第2章はピアノで、貴城さん中心の場面。
上品な青のお衣装がキレイでした〜。
もちろん貴城さんによくお似合い
で、音楽家という設定で
ありながらも王子さまのようでした(^^)。
途中で現代的なミュージシャンに変貌するのも見所です。

第3章はベースで、 OGの安寿ミラさん振付の場面。
藤井先生の作品に加え、ヤンさんの振りつけも楽しみにしていました。
グレーのシックなスーツ姿で登場したコムちゃん。
今まで以上に 大人の男役としての雰囲気が出ています。
踊っているコムちゃんに、ヤンさんが重なって見えるくらい、
ああヤンさんらしい振りつけだなぁと感激でした〜(^0^)。
決めの型とか踊りかたがヤンさん!って感じで、カッコイイんですよ。
正直、ここまでコムちゃんが踊れるとは知らなかった。(←爆弾発言か?)
ゴマカシの効かないシンプルな場面なので、
実力というか、その人の持ち味がパシっと出てしまうというか。
今までのコムちゃんの印象とは180度変った印象を受けました、今回。
帽子の使い方も良かったですし(^^)。
圭子ちゃんの歌も良かったですよ〜。聞き惚れちゃった。
残念だったのは、思ってたより短い場面だったことかな・・・
もうちょっと長く、大勢のダンディな踊りを観てみたかったです。

第4章はギターで、スパニッシュなダンス中心の場面でした。
大きなセリにスタンバイしたりらちゃんの一人踊るシーンがあります。
踊る時の身体のラインがキレイで凛々しかったのが印象的です。
その後は、貴城さんを筆頭に音月くん、白羽ちゃんと天勢&聖くん、
壮くん、しいちゃんの順に歌い踊るメドレーになります。
ここのセットがスペイン風の鉄の門をモチーフにした感じのセットで、
個人的にはとってもお気に入りなのですが、盆と同じくらいの
直径なので、大勢で踊る時はちょっと邪魔そうだったかも(苦笑)。
途中で お約束?の男役同士のアヤシイ絡み(コムちゃんと貴城さん)
があって嬉しかったな(^^;。

中詰の場面でもあるので、パレードもあって豪華でした。

第5章はドラム で、しいちゃん、壮くん、音月くんを中心にした場面。
娘役もパンツにサスペンダーのお衣装で、サスペンダーを
使った変った振りでした。
たぶん舞咲りんちゃんだと思うのですが、
一瞬、グンちゃんがいるのかと思ってしまうほど似ていました。
気のせいとは思いますが、ショートの鬘を被っていて
見る角度によってグンちゃんに見える時があって・・・
お化粧が似ているんでしょうか?それともu-tsuの眼がオカシイか?

第6章はサックスで、ラテン音楽の場面です。
陽気に歌い踊るコムちゃんに客席から笑いがおこっていました(^^)。
表情が可愛くて可笑しくて、妙にコムちゃんっぽいというか・・・
かと思うと、りらちゃんとのダンスではセクシーさを感じました。
貴城さんもすっごく陽気で、笑顔爆発でした。

第7章はトランペットで、前場面のコムちゃんが一人舞台に残って
いると、突然、空からトランペットがスーっと落ちてきます。
コムちゃんがトランペットを吹くと星がたくさん落ちてくるんです。
その演出がすごく綺麗で感心しました。
白を基調にしたお衣装と帽子で雪組の全員が登場します。
コムちゃんだけは薄いピンクのお衣装ですが・・・
とても明るい、雪組の団結力を表わしているような場面でした。
花道までズラ〜っと並んだラインダンスは迫力です。
客席も手拍子で参加してました。

で、銀橋で歌うコムちゃんに集中していたとき、
通路を白い服の人が走り去って行くのが見えました。
一瞬、ファンが銀橋へ走り出したのかと思ったのですが(苦笑)、
次から次へと走り去る人影が通路を行くではありませんかっ。
出演者が客席から登場するという 「演出」を知らなかったu-tsuは、
たまたま通路側に座っていてメチャクチャ驚いたのでした(^^ゞ。
思わず「ビックリした〜」と声に出してしまいました・・・
ホントに驚きましたよ。心臓バクバクいってましたもん。
余談ですが、お芝居が始まる時に、♪ピロロ〜〜♪と笛の音が
するのですが、u-tsuはこの音にも実は驚いて、オペラグラスを
落としそうになりました・・・驚きっぱなしの公演です(^^;。

第8章はパーカッション(希望のゴスペル)で、
前場から続いています。
雪組が一丸となって迫力あるゴスペルを聴かせてくれます。
この場面の最後は大階段へのダンスと続いています。
ピンクのお衣装のコムちゃんとりらちゃんは、
新婚さんのように初々しくて可愛らしい デュエットになっています。
曲が<カノン>で、お二人の雰囲気にマッチしているんですね。
観ていて微笑ましい場面でした(^^;。

第9章はオーケストラ・フルバンドで、 フィナーレです。
お衣装がオレンジ色で、ちょっと眼がイタイ感じがしましたが、
とっても明るくて元気が出るような印象でした。
コムちゃんが大きな羽を背負って登場した時には、
u-tsuの後方の座席から「うわぁーーっ」っていう
感嘆の声がチラホラ聞こえてきました。
旅行会社のツアーのお客さんらしく、えらい驚いてました(^^)。

楽しみにしていた藤井先生のショー作品は、
今までの宝塚のショー作品の流れを取り込んだ上で
新しい試みがされていたり、先生の枠に捕らわれない
挑戦で驚かされたりと、楽しい時間でした(^^)。
でもお芝居同様、トップコンビの絡みが少なく感じたので、
それが残念だったかなぁ。
トップ娘役さんはショーになると出番が減るというのが
宝塚の伝統というかヘンな決まりゴトのようになってますが、
踊れる人はどんどん出してもイイんじゃないかと思うんだけど?
お芝居で登場場面が少ない時には尚更、そう感じます。
せっかく新コンビの絡みを楽しみしてたのに・・・勿体無いっ。

それはともかく・・・新星雪組はなかなか良かったです。
初日から10日くらいで、まだちょっと硬いかな?と感じた
部分もありましたが、新たな発見も色々あって
観に行って良かったなと思える舞台でした(^^)。
2年前客席を笑わせてくれたチー坊・・・
今回は真面目な役だったせいか、
どこにいるのか分からなかった(苦笑)。
気付いたのは終演後、パンフを見直して
「あれか〜」と思い出してからだった・・・
因みに役名は坂田金時、金太郎のモデルと云われる四天王の一人。

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