羽山紀代美
振付家30周年記念ダンシング・リサイタル

ゴールデン・ステップス
−1975〜2005−






できれば生で拝見したかったリサイタル・・・やっとDVDで堪能できました。
初めて宝塚の舞台を観てからン十年(苦笑)数多くの名場面に出会いました。
その中には今回選出された場面ももちろんあります。踊り手は違っても、
良いものの価値は時間の経過なんて関係ないんだ、とDVDを見て実感・・・
なので、ちょっと雑感を記してみたいと思います。


−第1部−
タンゴ・・・1987年「ザ・レビュースコープ」

演奏が始まった瞬間、ぞわぞわ〜っと鳥肌が立っちゃいました(^^ゞ
なんだかねぇ、懐かしいっ!て思いと、そうだよこういうのが観たかったんだよっ!
て思いが一気にきちゃって、身体が思いに反応しちゃったらしい(笑)。
この作品、雪組はTVで観て花組は劇場で観たんだけど、全体的には花の方が好きだった
んだよねぇ。なつめさん(大浦みずき)が休演で東京のタンゴはペーさん(高汐 巴)と
ルコさん(朝香じゅん)でしたが、アダルトムーディーな場面でカッコ良かったな。
あぁ花組だなって感じで。ペーさんは決してダンサーとはいえないけど、技術として
力の抜き具合が上手いから素敵なんですよねぇ・・・あくまでu-tsuの記憶は(^^;

で、現役による再現ですが、かなり好印象です。コムちゃんは線が細い印象だけど、
繊細さの裏に激しさがあるという風情が、このタンゴの場面にピタリとはまっているなと。
男同士のタンゴも綺麗で見入ってしまいました。昔、雪組は踊れない・・・なんて言われて
いましたが、それでも燕尾の場面は良かったと記憶しています(苦笑)。今ではそれに加えて
燕尾以外での踊りも向上していると、u-tsuなんかは感じていたりましますが。
コムちゃんとかしちゃんのタンゴは耽美な香りが漂うという印象で、こんなのは外の舞台じゃ
観れないだろうなぁと。身長のバランスもちょうど良いので形がキレイですよね。
TVで観た雪版は平 みちさんと杜さんの身長差がありすぎて、見た目が良くなかった・・・
場面の雰囲気としては良かっただけに、そこだけ浮いてしまったというか。
その点、このリサイタルでは全体的にバランス良く、懐かしの名場面を堪能できたと思う。
ただ残念なのは娘役の出番が少なかったこと・・・あの後にも場面は続いていて男女の駆け引き
のようなタンゴを踊っていたのに。できればそれも観たかったんだけどな。残念。




ラテン・・・1983年「オルフェウスの窓」

オルフェウス自体はずいぶん前に放送されたのをチラっと観た記憶がありますが、それも5分ほど
だったのでこの場面はDVDで初めて観ました。衣装は何度が使われているので知ってますけど(^^;
ラテン場面だからもっとガチャガチャしているのかと思ったんですけど、そうでもなかったかな。
静かな歌から徐々にパワーを増してくるという感じですよね。衣装や照明の華やかさに頼ることなく
振付と踊り手、歌い手の力だけで表現しているような演出だなぁと。
個人的には星組らしいというか、わたるくんらしいというか、絢爛で見せてくれたパワーがそのまま
持続しているように思えて、またこんな場面も公演で観たいなぁと思いましたね。

このリサイタルの時は大劇場公演中でしたねぇ・・・もう遠い昔のことのようです、懐かしい・・・



ドリーミング・ウェーブ・・・1985年「ヒート・ウェーブ」

1ヶ月ほど前になんとなくビデオを引っ張り出してきて「ヒートウェーブ」を見ました。
このジャズの場面はやっぱりイイなぁ〜って感心。で、先日、何気にTVをつけたらCSで「コットン
クラブ」が放送されてて、それがちょうどショーの場面で『Minnie The Moocher』をグレゴリー・
ハインズが歌い踊っているところでした。あぁ、ヒートウェーブのあの場面はここをベースに
しているのかなと思ったんですけど、舞台も映画もカッコイイ場面で、こんな場面ショーでまた
観れないかなぁと漠然と考えておりました。そしたらリサイタルで復活してくれて・・・

月組の新コンビによるドリーミング・ウェーブ、すごく素敵でした。瀬奈くん、渋い燕尾がよく
似合ってたし貫禄もあった。歌も上手くなったなぁと。初演の大地真央さんの声に似てるから、
一瞬、真央さんとだぶってしまったけど、踊り歌っている姿を観ていると初演の人と比べる
どころではなく、瀬奈じゅん率いる月組の場面だなというふうに思えてくる。
全組子が揃っているワケではないけど、新コンビ誕生して大劇にお目見えするのはこのリサイタル
が初めてなのに、気負うことなく魅力をよく発揮していたし組のパワーもあった。
この名場面を観てたら、お披露目公演のショー作品がすごく楽しみになりましたよ。
正直、瀬奈くんがあんなに男らしい男を踊れると思っていなかったし、相手役のかなみちゃんも
可愛いだけかと思ったら、少女らしさを残しつつも大人な女性像をみせてくれて、このコンビへの
期待度がグンと上がりました。初々しいコンビだとは思っていたけど、大劇で主演というには
貫禄なさそうだなという印象もあったので、この場面ですっかり考えが変わった(^^ゞ
瀬奈くんを中心にかなみちゃん、ゆうひくん、きりやんという面々・・・
なんかとってもフレッシュで若々しい組の誕生だなぁって、観てて爽やかだった。

叶わぬ夢だけど、リカさん在団中にリカさん流のドリーミング・ウェーブも観てみたかった・・・



MC・・・わたるくん、コムちゃん、瀬奈くん
珍しい組合せというか、いつものTCAとは違う新鮮な印象が(^^)
最上級生のわたるくん、話を引っ張っていかなくちゃいけないだろうに、コムちゃんの話しぶりに
笑っちゃって・・・そんなわたるくんを横目にコムちゃんは涼しい顔で続けるという。
チームワークの良さを感じましたね(笑)しかも、小柄なライオンってなんですか(苦笑)
ちょっと遠慮がちに2人に付いていく瀬奈くんも、さっきまでカッコ良く踊っていた人と同人物
とは思えないような大人しさがカワイイし。ほのぼのしてて、なかなかイイ並びでしたね(^^)



キリエ・・・1993年「パパラギ」

これはBSかなんかで放送されたのを見ただけですね。ショーではお馴染みの善と悪、光と闇の対極
を描いた不思議な場面は数多くありますが、これもその1つになるのかな?この場合は神と悪魔か?
初演の聖少女あやかちゃんは黒塗りで、ちょっと笑いが入ってしまったu-tsuですが、ダイナミック
と妖しい魅力を振りまく姿はステキだったなぁ。あの頃、娘役トップとしてピカイチだったと思う。
下級生の頃から可愛いなぁって思ってて、星へ移動してネッシーさんたちに混じっての並びを観た
時は嬉しかったです。すごくゴージャスな並びでしたもんねぇ。一組であれだけ豪華な並びは最近
あまり観られないような・・・アイツウは千珠 晄さんで、放送を見た当時は別段何を思うことも
なかったんですけど、見返してみると神に誓いを立てたであろう人物を誘惑するにはちょっと
無理があるような・・・サミーさん自身は好きなダンサーの1人だったけど、このアイツウという
役に関してはちょっと配役が合ってないように思ってしまう。アイツウの誘惑に屈しないから聖少女
が連れてこられるワケで、それが成功してアイツウが最後に勝者になるんだからアイツウが魅力的
すぎてはいけないんだけど、やっぱ観てる側として、こういう場面はビジュアルが大事だと・・・

再現では水さんがパパラギ、アイツウは音月くん、聖少女に陽月 華ちゃんという配役。
どちかといえばギラっとした印象の強い水さんなので、白いパパラギは新鮮でしたね。
アイツウの誘惑を必死に払いのけるところは、表情も新鮮だった(^^)
音月くんは黒い長髪が似合っていて、妖しい笑みを浮かべながらパパラギを誘惑する姿も良い。
できればもう少し丁寧に振り付けをこなしてほしいかも・・・華ちゃんの少女は、いつもの元気な
姿とは180度変化して、こんな踊りもできるようになったのねぇと嬉しい限り。
もう少し、女性らしいしなやかさが出るとなおイイと思うんだけどな。とはいえ、水さんとのコンビ
は新鮮だったなぁ。結構、大人っぽいコンビだなぁって印象で、ちょっとこの2人でバウとか
観てみたいかも〜って思った。でも2人ともサバサバしてロマンス物は観れないかも(苦笑)・・・



ヒート・オン・・・1994年「ラ・カンタータ」

確か、紫苑さんのさよなら公演のショーでしたよね?以前のショーの名場面がいくつか組み込まれて
いたような・・・?中でもシボネーの場面は剣 幸さん時代の「ラ・ノスタルジー」で踊られていて
u-tsuはあのラテン場面が大好きだったんだ。何年経った今でも好きなのよねぇ。あれは喜多先生の
振付だったかな。で、ヒート・オンですが、正直よく覚えていない(ーーゞこの歌を歌っている
マリコさんの歌声は覚えているんだけどねぇ(苦笑)u-tsuはマリコさんの声が好きなんだよね。
だから歌声はよく覚えているんだけど、この場面の印象ってのはあまりないかも・・・

再現ではきりやん中心に月組の男役が登場。きりやんの歌は流石に安定していて聞き惚れますねぇ。
そして踊る姿もキリリとしてる。「長い春〜」以来、生で月観劇していないのですが、すっかり
貫禄が出て大人になったなぁと、妙に感心してしまった(^^;でも先ほどのジャズよりも勢いを
感じないのは何故なんだろうか?曲のせいか?それとも全体の踊りにバラつきを感じるからなのか?
野性味がちょっと足りないのかなぁ?きりやんや越リュウはイイ感じなんだけどな・・・



ハードボイルド・・・1995年「ダンディズム!」

2000年のベルリン公演で初めて観た場面。真矢みきさん率いる花で上演されたと知った時は、
あぁ、花組の雰囲気に合ってる演出だなぁと思った。こちらも前半に男同士のタンゴがあって、
でも燕尾ではなくスーツとソフト帽。「ザ・レビュー・・・」とは違った男同士の美学みたいな
ものが感じられて、宝塚ならではだなぁと。ベルリンの時は海外の人の反応が気になった場面
でもあります。使われている曲も作り手の名を見る限りではJポップスのようで、それも面白い。
確か98年のTCAでも真矢さんが歌われていたような?あの時の燕尾には驚いたっけな・・・

で、これは安蘭さん中心の星組が担当。まとぶんと礼音くんのタンゴから始まるという、いつもの
星公演でも珍しい組合せ(^^)バックに「ソウル・オブ〜」のセットが使われていて、またしても
公演中だったということを実感(苦笑)。とうこちゃん、またしても歌中心という印象だけど、これが
またこういう曲が上手いから何ともなぁ。なんでだか嵌ってるんだよねぇ。キザったらしい歌といえば
安蘭けいというか(笑)。イヤミじゃなくて褒めてんだけどね、もちろん。ここでの踊りもカッコイイ
振りが多くて、わたるくんにも出て欲しかったなぁって。こういうハードボイルドって全ツのサザクロ
以来なかったし。早く、オーソドックスな宝塚らしいショー作品を星で上演して欲しいって思った。



ビバ!シバ!・・・1988年「ビバ!シバ!」

月組で上演されたこのショー、好きでした。中でも『悲哀』という場面とこの『アンチェインマイハート』
は印象的だった。涼風さんの歌声と郷真由加さんの踊りが忘れられず、これを再び観れるのかと思ったら
すごい嬉しかったですよ。あの頃、サイコさんとこだま愛さんのダンスがすごく好きで、宝塚きっての
ダンスコンビだなぁって思ったものです。でも同じくらいシメさん&シギちゃんコンビも好きだったが。
みんなそれぞれにカラーも違ってたから、ダンサーといっても踊り方は色々で比べようはないんだけどね。
この場面はとにかく男役さんの色香が漂うカッコイイ、素敵な場面だったという印象です。

今度はゆうひくん中心の月組に、同期のかしちゃんが歌手で参加。曲が始まった時は懐かしくて懐かしくて
単純に嬉しかった。最近、ショーでもこういうアダルトな雰囲気の曲って少ないから新鮮。
でもちょっと、かしちゃんの歌はいつもに比べて劣るような気が・・・がなるような歌い方がせっかくの
曲の魅力を損なっているように聴こえて残念。ヘンに力んでるようにも思えたな・・・どうしたんだ?
ゆうひくん他月のみんなが踊る振りを観てると当時の舞台が重なって見えて、お衣装もターバン使用で
ちょっとオリエンタルな雰囲気漂うこの場面がホントに好きだったなと改めて実感。
このショー作品、もう1度プロローグから観たいよなぁ・・・



ジャンクション(殺人狂駅)・・・1991年「ジャンクション24」

大好き大好き大好きっな場面でしたさ。この作品自体が好きだったし。宝塚のアステア、なつめさんの
最後のショーで、なつめさん振付の場面もあったよね。なつめさんにしては可愛い振りで意外だったっけ。
初演でお気に入りだったのはシルバー・キラーとレッド・キラーだった。真矢さんのおトボケぶりに笑い、
なつめさん演じる機敏なおじいちゃんに拍手した。突然クルクル回ったり足上げたり、老人からは想像
できないあの動き。新手のキラーが登場すると急に老人に戻って車イスで退散しちゃうという・・・
それまでのショーにはない新鮮さと楽しみがあって良い場面だった。この場のラストが想像できないほど
次から次へと色んな人物が登場して、みんなが大金が入っていると思われるスーツケースを奪い合う。
ホントに入っているのかどうかも分らないものに、命がけで近づいていく。それを軽快に絶妙な間で繋いで
いて、ただただ笑って観ることができて印象的な場面でしたね。

再現では豪華な顔ぶれで、初演に劣らない良い場面になってた(^^)。舞風りらちゃんの美人の泥棒は
可愛くておっとりキャラが嵌ってる。その子分は女主人に似て、緊張感のなさがイイ(笑)。
ホワイト・キラーのきりやんは意外とシンプルにまとめ、シルバー・キラーの水くんは新鮮な一面を
見せてくれました。でももうちょっと、老人と機敏なダンスのギャップが出たら良かったな。
レッド・キラーのとうこちゃんはカッコつけながらもコミカルな動き、ノーブル・キラーのかなみちゃん
たちは金ぴか衣装で一番目立ち、ブラック・キラーのかしちゃんは黒のギャングが良く似合ってた。

登場人物が出揃ってスーツケースを奪い合っているとゴッド・ファーザーわたるくん、コムちゃん、
瀬奈くんが機関銃をぶっ放し、ただ1人シルバー・キラーの水くんがそ知らぬ顔でスーツケースを
持ち逃げ・・・スキップで去って行ったけど、果たしてホントに大金が入っているかどうか(苦笑)。
初演では、引き続き出番があるナツメさんの衣装が入っていたんですよねぇ。時にはお菓子が入って
いたり、中身がどんどんエスカレートしていったようですが・・・

ゴッド・ファーザー3人によるダンスはなかなかイイ並びで、それぞれ個性的で良かったなぁ。
涼しい顔のコムちゃん、ちょっとキザが入ってるわたるくん、爽やか青年の瀬奈くん・・・
持ち味も魅力も違う3人で、何より新鮮。コレに尽きるね。この珍しい3兄弟、好きだわ(^^)




第1部は懐かしい時代の名場面中心でバラエティーに富んだショーでした。
これだけで一つのショー作品になっているように思う、うん。近頃は1本通して物語になっている
ショーも多く、それはそれで一貫性があって楽しめるんだけど、次々と場が変化する、例えるなら
万華鏡のようなショー作品のスタイルも大切にしていってほしいと実感。
同じ先生の振付にもかかわらず、全ての場のカラーが違うのは素晴らしいよ。
しかも初演から何年時間が経過しても、新鮮で、よりパワーを感じる。
今の宝塚のショー作品に欠けているものが、全てこの1部に凝縮されているように感じた。
全組の全作品を観ているワケではないから感じ方が偏るかもしれないけど、
少なくとも、最近のショー作品よりもレベルが上だとは思う・・・





第2部 雑感はこちら


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