王家に捧ぐ歌

2003.9.19 東京宝塚劇場 初日 2階1列下手




今まで観た宝塚作品の中で、
最も重いテーマであり最も壮大な舞台であり
最も人間の感情の深いところを表現している作品・・・
というのが、初めて「王家に捧ぐ歌」を観た感想。
人気の高い「エリザベート」と同レベル、
もしくはそれ以上に完成度が高いのではないか・・・
とさえ感じました。(エリザはビデオ鑑賞ですが)

大劇場で1ヶ月以上公演し、そのテンションのまま東上した
感じがすごくあって、初日とは思えないほどの厚みがありました。
大劇場後の公演でも初日は意外と出演者の感覚が掴めていない
ことが多いというか、初日から1週間くらいはちょっと違和感が
あったりするんですが、今回に関してはそれが無くてビックリ。
ホントに組がいつも以上に力を発揮しているのがよく伝わって
きますし、スタッフさんたちとの意思の疎通というか、
信頼関係も上手くかみ合っているようで・・・
良い環境で公演できているなぁと思います。



第一幕・・・第一場 石壁

ウバルト、カマンテ、サウフェたちの魂が3500年の時を経て
ようやくラダメスとアイーダが命を犠牲にしてまで
訴えた平和の意味を知るという冒頭の場面・・・
3500年という想像もつかない時間のなかで、ようやく
何が大切だったのかと気付く3人だけど、
気付いたところで実は世の中は何も変わっていないという
事実にも直面する魂たち・・・
「もう一度やり直せるなら」と犠牲になった二人を回想
していると黄泉の船が現れる。
船に乗ったラダメスとアイーダはとても穏やかで静かな
表情をしていて、それを見たウバルトたちの後悔の念は
更に大きく強くなる。
黄泉の国に赴くことで愛し合うことを許された二人が、
それを大切に育んでいるように見え、
そしてウバルトたちの後悔の回想を二人も感じているのか
辛い表情も見えて、この冒頭だけでかなり作品に惹きこまれました。

第二場 イシスの神殿

ウバルトたちの回想から3500年前のエジプト。
捕えられたウバルトたちは剣を奪われ暴力を受ける。
剣を持たない者に対してのエジプト戦士のありかたに
疑問を受ける場面であり、神の子として称えられる
ファラオの不公平さにも気付く場面でした。
あの当時は力だけが全てという思想があったと思うので、
負けた者には容赦ない仕打ちが日常的にされていたのでしょうね。
アモナスロも結構に卑怯な手段に訴える王ですが、
ファラオも似たり寄ったりだなぁと・・・
ファラオがこのエジプトをどうしたいのか?っていう
のが全く伝わってこなくて、この王は何をしたいのよ?って感じ。
アモナスロの方が分かり易くて人間的ですよね。
ま、だからこそ、エジプトのファラオは神の子と称されていても
納得できるんだろうけど(苦笑)。
意外と自由にならない部分が、ひょっとしたらあるのかもしれない?

第三場 石壁

戦士ラダメスの登場シーンですが歌の冒頭ではライトが当たらず、
それがラダメスの心境を上手く表現しているなぁと思いました。
「選ばれる将軍は私だ!」と叫ぶとライトが当たり、
獅子や鷲のように戦う決心を力強く歌い上げるラダメス。
こういうところを観ていると、ラダメスはやっぱり
戦うべく生まれてきたのかな、と思えますねぇ。
良い意味で自信家というか(苦笑)。
まぁ、この時点ではもうアイーダと一緒になるために
エチオピアを解放するんだという決意もあったのでしょう。
だから将軍に選ばれるのが自分でないといけない、
絶対に選ばれてやる!っていう気持ちでいたのでしょうね。

アイーダが現れると戦いは終る終らないで問答になる。
強大な国に負け虐げられてきた人間と、その正反対の
立場にいる人間とでは考えが全く違う・・・
ラダメスは初めてその事に気付き、ショックを受けたように見えます。
ファトマたちが自分の家族の最期がどうであったかを
ラダメスに訴えると、それに対してどうしていいのか
分からずただ立っているのが精一杯の様子なラダメス・・・
恨みは決して尽きることはないとアイーダに云われ、
それでも平和の為に戦うというラダメス。
自分は戦士として生きてきたから、戦うことで得る平和しか
知らないという感じなのかなぁ、ラダメスの気持ちとしては。

そこへ「戦いは新たな戦いをうむだけ」っていう
アイーダの言葉が大きく響いてくるというか・・・
この時点で理解できていなくても、この言葉がラダメスの
心に大きな影響として浸透したのは間違いないと思います。
それでも尚、自分は戦いを終らせエチオピアを解放してみせる、
と決意を他人に断言するラダメス。
もしかしたらこの人ならやり遂げてくれるかもしれないという思いと、
たった一人では無理に決まっているという疑いの思いとの
葛藤で戸惑っている表情のファトマたち・・・
アイーダは愛するラダメスの言葉を信じたいけど、
信じきることができないという風な様子。
当時では、ラダメスの云っていることは理解不能なことですもんね。
それと同じくらいアイーダの言葉も理解不能なんでしょうけど・・・

そこへアムネリスが登場・・・
嬉しそうにラダメスのもとへ訪れたアムネリス。
きっと楽しく話したいことがあったでしょうに、
ラダメスがアイーダに指輪なんて目の前で渡そうとするから・・・
アイーダを想っていることがバレちゃってねぇ(苦笑)。
もうちょっと上手くやればイイのに・・・って思うんだけど、
ホントに真っ直ぐな性格で女性の気持ちに鈍感なラダメスだから
こその行動なんでしょうねぇ。
想われるには良いけど、好きで追いかける側にとっては
厄介な男だなぁっていう感じです(苦笑)。
余談ですが、以前、どうしてアムネリスはアイーダが王女だと知ったのか?
と疑問だったのですが、ラダメスのこの行動によって彼の気持ちを
知ったアムネリスは、アイーダの身辺について色々と調べさせ、
後にエチオピア王女であることを知るのかなぁと解釈しました。

で、この場面のラダメス、アムネリス、アイーダの
気持ちの掛け合いが唐突のような印象があるんですが、
内容はまぁ、ちゃんと気持ちが表現されていて分かり易いかなぁと。
結構、こういう複数の気持ちの掛け合いの場面とか歌が好きなので、
個人的に印象深い場面でした。
自分の気持ちを抑えられないという、3人に共通している心情が
ギュッと詰まっていて、全てが思い通りにいかない歯がゆさ
みたいなものを感じますね。
できればこの掛け合いは、舞台中央に3人並ぶよりは
上手・下手・中央と別れて歌って欲しかったなぁと・・・
この時はあまり気持ちが近くない3人だと思うので、
それなりに距離が欲しかったなと思うんですけど。

第四場 メンフィス神殿

エチオピアが攻めてきたという伝令が入り戦いの銅鑼が鳴り響く。
ファラオは破滅の道を選んだエチオピアを滅ぼす為に
新たな将軍を任命するという・・・
その名は・・・ラダメス!
将軍に選ばれたことで胸がいっぱいになったラダメスは
その喜びが言葉にならず雄叫びで感情を表わした。
アムネリスは未来のファラオとなるに相応しいラダメスを
嬉しそうに見つめ、ファラオは娘の夫となるであろう戦士を
誇らしく温かく見守る。
アイーダは・・・実はその瞬間のアイーダまでは
目がいかず(苦笑)、でも複雑な心境だったのではないかと。
エチオピアに攻め込む将軍が愛する人であり、
将軍になってエチオピアを解放すると言った人も同じ人物。
手放しで喜べないのは確かだと思うんですけど・・・
実際にどんな表情だったのかは未確認です(泣)。

聖なる剣を差出すファラオのラダメスを見る表情が
とても優しく温かで、そんなにラダメスが可愛いんだ〜
ってちょっと不思議になってしまいました。
いくら娘の慕う男だからって、普通はもっと厳しく
接すると思うんだけど、それが全く感じられなくて・・・
周囲の人間もそれを感じ取っているはずではないかと。
やっぱりラダメスはただの戦士ではなく、ファラオにとっても
特別な人物なんだなぁと詮索しております・・・(^^ゞ

第五場 石壁

再びエジプトとエチオピアの戦いが始まると知ったアイーダたち。
エチオピアは勝利するのか?と問われ、意味のない争いの戦況に
何の感情も持てないアイーダは戸惑う。
故郷の大地へ帰りたい気持ちは大きくとも、それを現実のものと
するには争いに勝たなければならない・・・
それはアイーダの思想に反し、多くの犠牲が新たに生まれる。
だからこそアイーダは故郷への気持ちを我慢してでも
争うことを指示しないでいるように思えます。

そこへウバルトや家臣のカマンテ、サウフェが現れ、
アイーダは変わってしまったと責める。
エジプトの囚人になる前からアイーダが争うことへの疑問を
持っていたことに兄たちは気付いていなかった・・・
その為に、囚われて後、ずっと囚人として静かに過ごしている
アイーダの行為が裏切に思えたのではないかと感じます。
でもアイーダは囚われる前から、争うことに意味はないと
訴えていたかもしれない・・・力、権力が全ての王や王子に
とってはただの戯言と一蹴されていたのかもしれません。
アイーダを側で見てきた同じ女性のファトマでさえ理解
できなかった思想ですから、家族であっても男性の兄たちには
更に理解できないことだったでしょうし。
確かにアイーダは勇敢な部分があったかもしれません。
一緒に剣を振りまわして戦うことはなくても、
それくらいの勢いのある王女だったかもしれない・・・
おそらく精神的に強い王女だったのではないかなと。
負けず嫌い、弱音を吐かないとか・・・
でも囚人になってからはそんな影は消え、
波風立てないように静かに生きるアイーダに
失望したのでしょうね、カマンテたちは。

そしてウバルトたちがアイーダを責めたてるのを見た
ファトマたちも、アイーダの優柔不断な態度を責め
今の境遇を全てアイーダのせいだと云わんばかりに振舞う。
アイーダの責任ではないと分かっていても、
どこかへ怒りの捌け口を求めているファトマたちは
王族であるアイーダを、つい責めてしまったのでしょうか?
ファトマは去り際に「王女であることをお忘れなく」
とまで冷たく告げていく・・・アイーダにとって一番信頼
しているであろう人物にそう云われて可哀相。
アイーダは王女である前に一人の人間なのにね。
争いは人の心までも変えていく
というのを立証している場面でもあります。

思いがけず家族や同国の囚われ人に責められ、
急に悲しみや寂しさを感じたのか、アイーダは涙しながら
嘘をつけない自分の気持ちを歌う。
とてもアイーダが孤独で可哀相な場面ですが、
それでも自分の考えを訴えかけていける精神力の強さが
彼女のすごいところだなと思います。
それに気付かないウバルトたちの目は節穴か?!
自分のことしか考えないウバルトたちだから気付かない・・・
ある意味、アイーダも自分のことしか考えていないんですけど。

第六場 戦場

将軍となったラダメスはエジプト軍を率いて
エチオピアに勝利するという場面ですが・・・
なんか、ラダメスの気持ちと戦友ケペルとメレルカの気持ちに
ズレが生じているように思えてしまいました。
戦略を立て、それを遂行するには信頼できる仲間がいないと
事は上手く運びません。ケペルとメレルカはラダメスにとって
言葉でなくとも云いたい事が伝わる仲だと思うんです。
戦場でしか見出せない友情や信頼がある3人ですが、
どうも生きること死ぬことに対しての感覚というか
考えは微妙にかみ合っていないように感じるんです。
ケペルとメレルカは戦場でしか学べなかったと
生死について歌っているんですが、それなら余計に
凄惨な仕打ちはできないように思えるんですが・・・?
それなのに必要以上にエチオピア人を攻撃するなんて、
ちょっと理解できません(苦笑)。

ラダメスはアイーダと出会ってから真っ直ぐな生き方を知り、
いつしか争いをなくしエチオピアを解放したいとさえ
思い始め、その為に必要以上に敵を攻撃する事に戸惑いを感じて
いたのではないでしょうか?
その上に、エジプト軍が敵をいたぶっている光景を見て
気持ちが晴れず戦いの意味も消え孤独を感じていたのかなぁと。
ただ、アイーダを想うときは、今自分が戦っている意味は
何なのかっていうことは分かっているようですけど(苦笑)。
全てはアイーダの為に・・・っていうのがホンネよね。
勝利の意味も、生死が何なのかも、ラダメスと
ケペル、メレルカでは理解しているものが違うという・・・
一度、よ〜く話し合ってみたほうがいいんじゃないの?って思う。

第七場 石壁前

凄惨な戦場の場面のすぐ後に、えらく軽い音楽が・・・
エジプトはすごいぞ、強いぞ〜って女官たちが
誇り歌っているんですが、あまりに宝塚らしい場面で
ホッとしちゃいました(苦笑)。
それまでが重いテーマの中での流れだったので、
一息つくには丁度いいタイミングかなと(^^)。

第八場 アムネリスの居室

そして鏡に映る自分を見つめるアムネリス様が登場。
自分がどれだけ美しいかと確認するように、
ちょっとずつ見る角度を変えながら鏡に見入るアムネリス。
ラダメスのことを考えラダメスを想いながら見つめる鏡に、
あなたの心が分からないとつぶやくアムネリスは
王女というよりも一人の女性という印象が強いですね。
好きな人のことであれこれ悩む普通の女性・・・
素のアムネリスがとても普通だということに気付く一瞬ですね。

でも、その後のアイーダへの仕打ちはちょっと理解できないかも。
どうしてわざわざラダメスが死んだと嘘を伝えたのか・・・
単にアイーダの口からラダメスを愛していると言わせたかった、
っていうだけなんでしょうか・・・?それとも将軍と囚人という
身分違いの恋愛が許されるわけがないと云いたかったのか?
ラダメスは私のものだと、アイーダに誇示したかったとか?
敗国の囚人は囚人らしくしていろということなんでしょうか・・・
いずれにしてもこの時のアムネリスは大国エジプトの王女という
権力を利用しているようにしか見えず、ある意味、やっぱり
自分のことしか考えないワガママ王女なんだなぁっていう気が
しないでもない・・・って感じでした。

欲しいものは全て手にしてきたアムネリスですが、
唯一手に入れられないものといえば・・・ラダメスの心。
ファラオの娘、王女に気に入られれば地位も権力も手に入るのに、
敗国の王女で今では囚人のアイーダに想いを寄せるラダメス。
何も持っていない、何の力もないアイーダに
一番欲しているものを奪われて、やっぱり誇り高いアムネリスは
傷ついたんでしょうね・・・それは可哀相だと思う。
傷ついて嫉妬が先走ってしまったのでしょうけど、
同じ王女としてアイーダを少しでも気遣ってあげられなかった
のかなぁっていう疑問がu-tsuにはあります。
後にラダメスたちの意志を継いで国を治めるアムネリスですが、
この時点では自分のことで精一杯という感じなんでしょうね。

余談ですが、ワニのベッドは寝難そうだよね・・・って思う。


第九場 凱旋 メンフィスの門

凱旋の踊りは2階席のほうがキレイかなぁという感じですね。
次々と列の配置が変わるので、上から見下ろす方が分かり易いかも。
バレエでもなくダンスでもなくっていうちょっと雰囲気の違う
感じがする場面ですよね。凱旋だからもっと盛大でイイような
気もするんですが、ほとんどの場面が壮大なので
逆にちょっと抑えるくらいがイイのかなっていう気もしますし・・・
組み立てるのがちょっと難しい場面かもしれない。
ラダメスも凱旋の踊りのホントに最期の部分に登場して
ポっと立ちあがったら終りという(苦笑)。
それもまた新鮮な印象があって、これでイイんだなっていう感じ。

ゴンドラに乗ったファラオが、ほぼ目線の位置から登場した時には
やっぱり違和感があり、何より笑えました(苦笑)・・・
ファラオにはもっとドーンとしてて欲しいのに、
あれはちょっと、どうなんでしょうねぇ・・・?
見慣れれば気にならなくなるのでしょうけど、観劇回数が
少ないu-tsuにとっては果たして・・・?

ここは一幕ラストの場面で、国の存亡を左右する事の発端に
なる場面でもあり、舞台も客席も緊迫したムードでした。
ラダメスは勝利した喜びはもちろんあるけれど、
これから自分が何をしようとしているかを考えると
戦場で戦っているときよりも緊張するというような面持ちで。
アムネリスは愛する人の無事と勝利を誇らしく喜び、
ファラオもまたアムネリスと同じ気持ちでいるせいか
表情がとてもやわらかく・・・慈愛に満ちているという感じで。
王家の首飾りをアムネリスがラダメスにかけてあげる仕種が
とっても幸せそうで、髪を整えてあげている時の表情が良い。
ホントにラダメスが大好きなんだねぇ〜っていう雰囲気が
伝わってくるんだけど、ラダメスにとってはそれが重荷に
なっているのかなぁとも思えるというか・・・
でもさ、王家の首飾りを、大勝利を得た将軍とはいえ戦士に
与えちゃうなんて、次期ファラオはお前だって云ってるような
ものじゃないの?大勢のエジプト人がそう受取っているだろうし。
アイーダと一緒になりたいと思っているのに、
どうして黙って受取っちゃったのか
ラダメスの気持ちがちょっと不明かなぁ。

新しく捕えられたエチオピア人たちがエジプトを見て驚く。
黄金に輝いたエジプト、同じ人間なのになぜこんなにも
世界が違うのかと圧倒される。
ホントに純粋な疑問ですよね。同じ人間が支配していながら
ファラオは黄金に包まれ、国のあちこちが輝いているエジプト。
皆殺しに!とエチオピア人に向い叫ぶエジプト人を見つめる
ラダメスの表情はとても辛そうでした。
果たして自分のこれから宣言する言葉にどう反応が返って
くるのか不安もあったのでしょう。

そして遂に捕えられたアモナスロ王が連れて来られると、
ウバルト、アイーダたちが駆け寄り家族の再会を果たす。
エジプト人たちは更に声を高らかに殺せ!と唱える。
その群集に向って、私の命と引き替えに父を助けてと叫ぶ
アイーダの姿を、苦渋の表情で見つめるラダメス。
声は更に高く大きくなり、やがてラダメスが口をひらく・・・

我が望みはただ一つ・・・エチオピアの解放!

その場にいた全員が目を見開き我が耳を疑う。
呆然とした表情で何故かと理由を問うファラオ・・・
ラダメスはずっと胸にくすぶっていた争いへの疑問、
アイーダと出会って更に確信を持てるようになった
この世のあるべき姿を切々と語り始める。

ファラオは静かに聞き、神官は怒りを感じているかのように
表情硬く、アムネリスはラダメスの本音を探りつつ冷静に、
エジプト人たちはラダメスの云っている事が理解できない様子で、
それでも耳を傾けている。

アモナスロ王は何の戯言を聞かされているのかという表情で
ラダメスを見つめ、ウバルトは自分たちの解放を敵の将軍が
願い出た事実に困惑し、エチオピア人たちは夢と現実との
間でラダメスの話しを聞き、アイーダは本当に解放を願い出た
ラダメスを驚きつつも、自分の愛する人が同じ考えでいることに
嬉しさでいっぱいという表情で見つめる。

神官が異を唱える中、ファラオは苦渋の決断を迫られる。
何でも望みのものを与えるという宣言を違えれば、
神が嘘をついたことになり、威信も力も失うことになる。
ファラオは信頼していた戦士の言葉に自分の命と国を預け
大きな賭けに出る。
エチオピアを解放することで、この先にどんな試練が、
どんな未来が待っているか・・・ファラオにさえ分からない。
それでもファラオは、ラダメスの望む平和がどんなものか、
自分の目で見届けたいと願いを聞き入れる。

でもこの時点で喜んだのはラダメスとアイーダだけだった・・・
その事実にラダメスは気付いていない様子。
ただ、争いのない世界があるのならそれが一番幸せかも・・・
と考えているエジプト人やエチオピア人は多少なりとも
いたと思います。でも恨みも憎しみもすぐには消えるものでは
ないので、心底喜んでいるのはラダメスだけかもね・・・
アイーダでさえ心底喜んでいるかどうか不明ではないかと。

アムネリスは父に心配そうな目を向け、お父様・・・と
呼びかける。父が微笑みながら娘を諭すように何かを告げると、
アムネリスはただ頷き父王の側に佇んでいた。

ここの父と娘のやりとりが、印象に残ってます。
とてつもない決断を下した父になんと云っていいか分からず、
ただ一言呼びかけるのが精一杯という、普段の王女からは
想像できない弱さが見えて、恋する女性とはまた違う女性の部分が
垣間見える瞬間です。



これだけ書いて一幕分の感想なんですが・・・
久々に良い作品を観たなっていう気持ちが大きいです。
疑問もツッコミも多々あることはありますが、
宝塚ではそれがないとつまらないので・・・(^^ゞ

一幕ラストの「世界に求む」はホントに凄かった。
ラダメスってアイーダ以上に実は真っ直ぐで純粋だから、
後先考えないところがあるんですけど、
アイーダ同様自分の考えに信念を持ってる人なんだなぁと
改めて感じました。
優柔不断なところも見え隠れするんですけどね(苦笑)。
女性はそれを優しさと勘違いする・・・

幕開き冒頭からすんなりと作品の世界に入っていけて、
うん、違和感はありませんでした。
ラストの「殺せ〜!」の連呼は正直驚きですね。
今までこういう言葉は使われないことが多かったような・・・
悪意のこもったというか、敵を殺せ!っていう殺気を帯びた
使い方って記憶にないんですよね、ほとんど。
「清く 正しく 美しく」という世界とはかけ離れた
言葉の連呼に驚いたんですけど、その人物になりきって
云われると、イヤな言葉だけど気持ちが分かるというか・・・
なんか、不思議な感じでしたね。
宝塚もここまで進歩したか、みたいな印象もありましたし(苦笑)。

ま、取敢えず、一幕の感想でございました。
今回かなり長い感想になります(泣)。
一幕、二幕と出演者の感想で、3部作になるかも・・・



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